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宝石辞典

産地別で見る「エメラルド」をご紹介

1995年6月7日

5月の誕生石「エメラルド」を産地別でご紹介します。

 

コロンビア産エメラルド

コロンビア産エメラルド

鮮やかな緑色で知られるコロンビア産のエメラルドは、ひときわ優れた質を誇っています。伝統的にも評判からも、コロンビアは現在、最高のエメラルド産地と言えるでしょう。コロンビアには歴史的に重要なエメラルドの産地が以下の3ヶ所あり、それぞれ多くの鉱山を抱えています。

  • ムゾー
  • コスケス
  • チボール

ムゾー鉱山

名高いムゾー鉱山はボゴタの北161キロメートルのところにあります。ムゾー産エメラルドの結晶は、コスケス産やチボール産にくらべて彩度があるのが特徴で、世界でも最高のエメラルド鉱山に数えられています。

1960年代と1970年代に、ムゾー鉱山から6本アームを持つ星のような美しいトラピッチェエメラルド※が多く産出され、世界中で評判になりました。

トラピッチェエメラルド

コロンビアで採掘されるエメラルドの中でも僅かしか採れない、とても希少なエメラルド。
特徴は、宝石の中央から発する六角形の星の形の光です。この光はスター効果(アステリズム)のようにも見えますが、スター効果は小さな平板結晶が光を反射して起こるのに対して、たまたま星の形に結晶した黒い炭素質の不純物が反射して起こるものです。

コスケス鉱山

コスケス鉱山のエメラルドの結晶には幅広い種類の色が見られる傾向がありますが、ムゾー産のものに比べるとインクルージョン(内包物)が多く、やや淡い緑色が特徴です。

チボール鉱山

チボール産エメラルドは、コスケスやムゾー産のエメラルドに比べてインクルージョンが少なくて透明度がよく、青色かかった緑色が特徴です。チボール地区は3つの産地の中で一番小規模で、隣同士であるムゾーとコスケスからは離れています。

ザンビア産エメラルド

ザンビア産エメラルド

1931年にザンビアでエメラルドが発見され、エメラルドの産地としてはコロンビアに次いで重要な産地。ザンビア産のエメラルドはペグマタイトとタルク・マグネタイト片岩を母岩とし、透明度が高く濃い緑色が特徴。コロンビア産に比べると青味が強いと言われています。

ザンビアのカフブ地区はアフリカ最古のエメラルド鉱区の一つ。カフブ地域では小規模な運営の鉱山もあれば、世界最大のエメラルド鉱山、宝石採鉱会社ジェムフィールズ※のカゲム(Kagem)鉱山もあります。カゲム鉱山からの産出量は、世界の約20%を占めています。

ジェムフィールズ

ジェムフィールズ(Gemfields)とは、ロンドンを拠点とする上場企業の宝石サプライヤー。主にエメラルドとルビーなどのカラーストーンを扱っております。

ブラジル産エメラルド

ブラジル産エメラルド

コロンビア産エメラルドが鮮やかな緑色で知られているのに対して、ブラジル産のエメラルドは明るい緑から申し分のない緑、そしてやや濃い青緑まで、様々な色を持つことで知られます。

ブラジルで最初にエメラルドが発見されたのはおよそ500年前、ポルトガル人が来てからのことです。しかし、商業的に価値のある最初のサンプルが見つかったのは1963年になってからで、ブラジル北部バイーア州にあるパライーゾ・ド・ノルチという町の近くでした。それにより、ようやくブラジルには本物の「緑の火」は存在しないと言う意見が払拭されました。

ロシア産エメラルド

ロシア産エメラルドは、その息を飲むような透明度と緑のファイア、そして深緑の色合いで長く尊ばれてきました。

記録によると、ロシア産エメラルドが発見されたのは1830年。ロシアの農民マキシム・ステファノビッチ・コシェフニコフが、シベリアのウラル山脈にあるエカテリンブルグ近くのトコバヤ川のほとりで、嵐で倒れた木の根元にあるのを見つけたということです。ところが、16世紀終わりにスペイン人が有名なコロンビア・エメラルドを発見するかなり前から、ロシアはエメラルドを産出していたという根強い噂があるのです。大プリニウスが著書『博物誌』で取り上げているスキタイのエメラルドはウラル産のものだという言い伝えまであります。

19世紀に有名になったロシア産エメラルドの最大の産地はマリンスキー(聖マリア)鉱山で、1833年にマリシェボ村の近くで発見されました。この鉱床は第一次世界大戦後に国有化され、マリシェボが安全保障地域になるとエメラルドの採掘は中止されましたが、現在では生産も再開されています。

ロシア産エメラルドは大きいベリリウム鉱床から採掘されていますが、世界でも有数の緑色の濃いエメラルドの鉱山です。ファセットカットに適した結晶は掘り出した原石の0.5パーセントにも満たない量にすぎません。その結果、ロシア産エメラルドは、真のエメラルド通にとっては「何が何でも手に入れたい」宝石となっています。

パキスタン産エメラルド

標高の高い場所にあるエメラルド鉱床では非常に厳しい気象条件により採掘ができませんが、比較的低いところにスワート峡谷にグジャール・キリ鉱山と歴史的にも有名なミンゴラ鉱山があります(ミンゴラ産エメラルドを使った古代ローマのイヤリングが発見されています)。過酷な天候のため、冬季は操業ができず、手作業による産出量は限られています。パキスタン政府は1960年にヒマラヤ山系で見つかった比較的新しいエメラルド鉱床での採掘を、厳しく制限しています。

まとめ

産地別で「エメラルド」をご紹介いたしました。

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