最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年3月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
オークションとは
ジュエリーの資産価値が一番わかりやすいのが「オークション」です。オークションとは、ジュエリーや絵画、彫刻など、出品されている作品・商品の中から、気に入ったものを自分の指定した金額で入札することができる競売のこと。高品質の石や人気ブランドの特別なアイテムにはもちろん高値がつき、有名オークションでは10億円以上の値段がつくジュエリーも多数出品されています。世界で有名なオークション開催地・ジュネーブ、香港、ニューヨークでは一晩で100億円の取り扱いがあることも。
世界二大オークション
ジュエリーオークションで特に有名なのが、サザビーズ(SOTHEBY’S)、クリスティーズ(CHRISTIE'S)、ボンハムズ(BONHAMS)。ジュエリーに特化すればボンハムズが一番貢献しているのですが、オークションハウスとして取扱い金額が突出しているのはサザビーズとクリスティーズで、「世界二大オークション」とも呼ばれています。マリー・アントワネットの真珠(約41億円)、パープル・ピンクダイヤモンドの「THE SAKURA」(約32億円)、「オッペンハイマー・ブルー・ダイヤモンド」(約63億円)などの超高額ジュエリーが出品されていたのはサザビーズやクリスティーズです。
ところで国により人気の宝石(やブランド)は異なるようです。中東をはじめ世界的にはサイズの大きなジュエリーが好まれています。翡翠に強いのは中華マーケット。ロンドン、ジュネーブ、ニューヨークではアンティークジュエリー等、時代や背景を持っているジュエリーの人気が高い伝統があります。日本開催の世界的有名ジュエリーオークションは残念ながらありませんが2019年に約15億4000万円、翌年には約17億円のダイヤモンドを日本人がオークションで落札して話題になりました。日本においてもジュエリーへの関心の高さが伺えます。
オークションのオンライン開催と今後
素晴らしいジュエリーが多数出品され、見ているだけで心ときめくオークションの世界。最近はオンライン開催も盛んになり、家にいても世界各国のオークションに参加できるようになりました。以前は出品されることのなかった高額ジュエリーも見られ、ロックダウン中のパリでは全アイテムがオンラインで出品されていたとか。クリスティーズではオンラインで2億円以上のジュエリーが落札されるなど、売り上げは好調のようです。
ちなみに本年早速話題になった、2月にサザビーズで出品された555.55カラットのブラックダイヤモンド「エニグマ」は、約4億9000万円で落札されました。
このようにジュエリーは資産としての側面も併せ持っており、パライバトルマリンやアレキサンドライトといった宝石は今後もどんどん価値が上がっていくと予想されています。GSTVの番組もそのような視点からご覧になっていただくとまた普段とは違った面白さが発見できるかもしれません。
古屋 聡(ふるや さとし)
大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。