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資産価値としてのジュエリー

「資産価値」としてのジュエリー【第4回】サファイア

2022年8月31日

最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。

そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年9月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

青色のサファイア

 青色宝石の中で最も有名なサファイア。ダイヤモンド、エメラルド、ルビーとともに四大宝石のひとつでもあり、現在も資産価値が高い宝石として取引されています。9月の誕生石であるサファイアは見る者に「気品や安定を感じさせる」ことから欧州の王族や貴族に愛されてきた歴史を持っています。1981年、イギリス王室のチャールズ皇太子がダイアナ妃に贈ったサファイアの婚約指輪は有名ですよね。

 鉱物名はルビーと同じコランダム。「ルビーのお兄さん」といった立ち位置にあり硬度はダイヤモンドに次ぐ硬さを持っています。美しさ・耐久性・稀少性を高いレベルで併せ持ち、緑やピンク、オレンジ色までさまざまなカラーバリエーションをお楽しみいただけるのもサファイアの良さですが、今回は「青色のサファイア」に限定して話を進めていきます。

最も資産価値の高い「コーンフラワー・ブルー」

 最も資産価値の高いサファイアはインドのカシミール産。「コーンフラワー・ブルー」と呼ばれる気品と柔らかさを併せ持つ青色が特徴で19世紀後半に発見されるも短い期間しか採掘できなかった伝説のサファイアです。のちにパキスタン側からの採掘も行われたのですが赤みの強い紫色の素材が多く伝説の再来にはいたりませんでした。コーンフラワー・ブルーに近似した青色はビルマやスリランカ、マダガスカルからも産出されることがあり「カシミール・タッチ」と呼ばれ高値で取引されています。

高価に取引されるサファイア産出国

 ビルマ(ミャンマー)産のサファイアはとにかく原石の青色が美しい。加熱などの処理を必要とせずとも純色の青を得ることができるため人気が高い!ですが産出量が少ないので買付け時に苦労する素材でもあります。

 スリランカ産の「セイロン・ブルー」も評価の高いサファイア。他産地と比べて圧倒的に透明度が高く鮮やかな輝きを放ちます。色は若干の紫色を帯びており濃度は淡いものから濃いものまで幅広く採掘されます。またマダガスカル(東アフリカ)でもスリランカに近い特徴を持ったサファイアが産出されており、現在稼働している鉱山としてはビルマ・スリランカ・マダガスカルの3地域が高価に取引されるサファイア産出国として知られています。

 上記の他にもタイ、オーストラリア、ナイジェリア、アメリカのモンタナ州など、世界の多くの地域で個性あふれるサファイアが産出されていますが、近年上述した国からの産出が減少しています。今後サファイアの価格が高騰しすぎないことを祈るばかりです。

オークションにおけるサファイア

 産出量減少に伴い、オークションにおけるサファイアの価格も年々上昇しています。2007年、クリスティーズのオークションにて22.66カラットのクッションシェイプサファイアが約3億6千7百万円と、サファイア史上最高価格で落札されました。それを皮切りに、2014年10月・香港のサザビーズオークションでは17.16カラットの「インペリアルカシミール」が約4億3000万円、同年11月にスイスのクリスティーズにてダイヤのネックレスにあしらわれた392.52カラットの「アジアの青い美人(Blue Belle of Asia)が約20億4000万円で落札され、次々に最高価格が更新されているようです。


インペリアルカシミール(サザビーズ)
出典:Sotheby's
https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2014/magnificent-jewels-jadeite-hk0523/lot.1938.html

アジアの青い美人(クリスティーズ)
出典:CHRISTIE’S | A SPECTACULAR SAPPHIRE AND DIAMOND NECKLACE
https://www.christies.com/en/lot/lot-5844924

好みに差がでるサファイアの色

 世界の国や地域により色の好みにバラエティがあるのがサファイアの特徴。中東やイギリスは濃い青色を好み、東欧の地域では明るく優しい青色が評価されます。プロのバイヤー同士でも好みに差がでる宝石ですので、外部の評価に惑わされることなく「所見で美しいと感じたサファイアを手に入れてもらうのが良い」と個人的に感じております。

 古来からの“愛され石”サファイア。今月が誕生石ということで、今号でも紹介していますが、GSTVには他にも多数取り扱いがありますので是非テレビやWEBもご覧ください。

古屋 聡(ふるや さとし)

大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。

> 古屋 聡のプロフィール

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