最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2024年3月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
キャッツアイとは
「キャッツアイ」とは宝石表面に猫の目のような一条の光が現れる光の効果(シャトヤンシー効果)。アレキサンドライト、エメラルド、オパールなどにも見られる効果で、第10回でご紹介した大変希少なアレキサンドライトキャッツアイジュエリーは、オークション(サザビーズ香港)で2011年、約2億160万円で落札されています。
この魅惑的な効果を持つ宝石として一番有名なのはなんといっても「クリソベリルキャッツアイ」。まるではちみつのようにふくよかな表情と、光の反射によって起こる神秘的な光彩効果を持つこの宝石は、猫の日にちなみ2021年より2月の誕生石に追加された、高級宝石のひとつです。
クリソベリルの特徴
和名で金緑石と呼ばれるクリソベリル。アルミニウムの酸化鉱物の一種、つまりルビーやサファイアの仲間なので、硬度や屈折率、そして稀少性という宝石の3大要素の全てにおいて高いポテンシャルを持っている宝石です。
クリソベリルとアレキサンドライト
通常は褐色から黄色で産出されることが多く、インドのオリッサ鉱山で採掘されていた「パロットクリソベリル」はその鮮やかな黄緑色が高く評価されています。また、青緑色からワインレッドに変色することで有名なアレキサンドライトも実はクリソベリルの一員という、まさに高評価されるに相応しい鉱物なのです。
その中でカボションカットに研磨することで猫目の様な光彩効果が出現する石がクリソベリルキャッツアイに分類されています。
クリソベリルキャッツアイの浸透
古くから魔除けや幸運を呼び込む宝石として身につけられてきましたが、19世紀のイギリスにおいてビクトリア女王の息子コノート公爵が婚約者のプロシア王女ルイーズ・マーガレットへの婚約指輪として贈ったことをきっかけに世界中での認知度が一気に高まりました。
日本においても1960年より内閣総理大臣を務めた池田勇人が、スリランカ(当時はセイロン)を訪れた際に当時の価格でおよそ1000万円ものクリソベリルキャッツアイを購入したことが大きく取り上げられたそうです。
クリソベリルキャッツアイの価値
クリソベリルキャッツアイは、中国を中心とする中華圏や中近東での人気が高く、はちみつを彷彿とさせる通称「ハニーカラー」と呼ばれる飴色の石が伝統的に好まれます。
また近年では爽やかな黄緑色である「アップルグリーン」も人気急上昇中。これらの色に加え透明度が高く、シャトヤンシー効果が鮮明なもの、そして大粒であるほど高価値で取引されます。トリートメント(人為的処理)を施さないこともオススメポイントですね。
主な産出国はスリランカ、ブラジル、マダガスカル。かつてはスリランカが主産国でしたが産出が減少。供給不足が続く中新興国、特にインドネシアやマレーシアなどの富裕層への需要が高く、直近10年を振り返っても相場が上がり続けている宝石のひとつです。
オークションにおけるクリソベリルキャッツアイ
近年のオークションでは、55.43ctと大粒でハニーカラーのクリソベリルキャッツアイリングが、2,660,000香港ドル(約45,220,000円≒4500万円)で落札。これから更に価値が上がっていく宝石ですので、要注目です!!
GSTVにおいても1ctから大粒サイズまで、多くの石を取り揃えております。またシンプルなリングだけでなく、斬新でユニークなデザインジュエリーも用意しておりますので、是非ご覧になっていただければと思います。
\もっと見たい方!/
古屋 聡(ふるや さとし)
大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。