最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年5月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
ダイヤモンド
宝石やジュエリーといえば、真っ先に名前があがる「ダイヤモンド」。マリー・アントワネットが愛した宝石である、イギリス王室とゆかりが深い、レッドカーペットを歩く時に身につけるのがオスカー女優のステータスと囁かれていた、etc ―。格式高くゴージャスな話題に事欠かない、まさに“宝石の王様”です。
国際基準の価格表
ダイヤモンドにはRapaportという国際基準の価格表が存在し、プロが取引する際に用いられています。ゆえに宝飾品としての顔だけでなく、金などの貴金属と似たような「インフレーションに強い現物資産」という側面も併せ持ちます。過去に戦争の絶えない時代を経験している欧州では、自身の子供たちにダイヤモンドのジュエリーを与え「何か危機が差し迫ったら、このジュエリーを売りながら生活するように!」と教えていた家庭も数多くあったようです。
ダイヤモンドの資産価値と国際基準
良質な原石の産出は増えない一方、新興国の富裕層が欲しているので、天然ダイヤモンドの需要はさらに上がって、最近は世界的にも資産価値として脚光を浴びています。ダイヤモンドの価値は国際基準「4C」(カラット〈重さ〉、カラー〈色〉、クラリティ〈透明度〉、カット)で決まりますが、資産価値として特に重要なのはカラット・カラー・クラリティ。1カラット以上・H(ほぼ無色)以上のカラー・SI1(内包物が肉眼でほぼ視認できない)以上のクラリティの石は既に資産性が上がっています。
宝石やジュエリーが持つ歴史的背景
加えて、宝石やジュエリーが持つ歴史的背景などもその価値の考慮に入れられそうです。例えば2008年、ロンドンのオークションに出品されたドイツのウィッテルスバハ家が所有していたブルーダイヤモンド「ヴィッテルスバッハ」が約22億円で落札され、宝石では過去最高の落札額として当時話題となりました。1664年、スペイン国王フェリペ4世が婚礼で娘に贈ったものが、その後ヴィッテルスバッハ家に代々受け継がれてきたという歴史深いダイヤモンドです。
最近ですと、“ダイヤモンドキング”と呼ばれたアーネスト・オッペンハイマー氏の一族が所有していたブルーダイヤモンドのリング「オッペンハイマー・ブルー」が2016年にサザビーズ・ジュネーブにて約63億円、同一族のピンクダイヤモンドリング「ウィンストン・ピンク・レガシー」が2018年クリスティーズ・ジュネーブにて約57億円で落札。ルースだけでなく、ジュエリーとしての価値の高さもうかがえます。
ちなみに2017年サザビーズ・香港に出品されたピンクダイヤモンドのリング「ピンクスター」(驚異の59.60ct!)約79億円が、現在ジュエリーでは過去最高落札価格です。
上述したような色付きのダイヤモンドは「ファンシーカラーダイヤモンド」と呼ばれ、これからさらに価値が上がると予測されているダイヤモンド。同一のグレードでも石の状態や色合いにより価格に差が出ることもありますが、お家に眠っているルースやジュエリーを鑑定すると、思いのほか高価だった!・・・ということもあるかもしれません。
ダイヤモンドの本来の魅力
今回はダイヤモンドを資産性の面から解説しましたが、本来の魅力は美しい輝き・耐久性・稀少性をすべて高いレベルで併せ持つ宝石だということ。まずはお気に入りのダイヤモンドジュエリーを探していただき、身に着けて、ジュエリーを持つ幸せを感じてみてください。
少し高嶺の花なイメージがあるダイヤモンドですが、昨今はリーズナブルなジュエリーも増え、気軽に身につけて楽しめる存在にもなっています。GSTVでもさまざまなダイヤモンドジュエリーをご紹介しておりますので、是非番組をお楽しみください。
古屋 聡(ふるや さとし)
大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。