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映画の中のジュエリーVol.4「ナイル殺人事件」

「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」が映画の中のジュエリーを考察。今回は、映画「ナイル殺人事件」のジュエリーをテーマにご紹介します。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2021年4月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

映画「ナイル殺人事件」

 世界中にファンが多いアガサ・クリスティの小説 “Death on the NILE”は、ナイル川遊覧船内で起きる殺人事件で、名探偵ポアロが犯人を特定していくという物語。今回取り上げる“憧れの真珠”は原作小説で登場する伏線で、残念ながら1978年の映画では省略されているため、小説を元に掘り下げてみたいと思います。

映画:ナイル殺人事件(Death on the Nile) 公開:1978年12月
監督:ジョン・ギラーミン  出演:ピーター・ユスティノフ/ロイス・チャイルズ

真珠のネックレス

 登場人物の一人、リネット・リッジウェイは、20歳にして莫大な財産を相続しており、美貌も相まって社交界では注目の的。更に、彼女の身につけている天然真珠の3連のロングネックレスは、ご婦人方の垂涎の的です。天然真珠がどれだけ高価であるかを示す有名なエピソードがあります。1916年、カルティエが2連の天然真珠のネックレスとモートン・F・プラント所有の建物とを交換し、今のカルティエのニューヨーク本店にしたというものです。

 さて、事件の舞台に戻り、このリネットですが、遊覧船内で寝ている間に殺されてしまい、ポアロの犯人捜しが始まります。真珠のネックレスが消えたり出てきたりと、解決を阻むことになるのですが、そこでポアロが、真珠の真偽を確かめるために一番簡単な方法で鑑別をして、イミテーションであることを見抜くシーンがあります。その方法とは・・・。

 真珠のネックレスを電灯の光にかざして、真珠をなめ、歯でくわえたのです。それだけでイミテーションと分かるのでしょうか?

 真珠は主に炭酸カルシウムですが、構造は、方解石と成分が同じで構成が違うアラゴナイトの層と多糖類とタンパク質の混合物であるコンコイラン※という有機細胞膜との層で出来ています。天然でも養殖でも層は同じで、レンガの塀のようにブロックが積み重なっている状態です。一方、歯の表面のエナメル質はつるつるですが、拡大すると筋状の割り箸を束ねたような構造なので、真珠と接するとザラッとひっかかる感触がします。これを利用してポアロは真偽を確かめたのです。

※コンコイラン

日本語では、「コンキオリン」と訳されている。

 お店の商品には出来ませんが、探偵ポアロになった気分で、ご自身の真珠で試してみると面白いと思います。前歯に軽く当てて少しずらすだけ。なめる必要はありません。初めてでも分かりますよ。

目黒 佐枝(めぐろ さえ)

GIAサンタモニカ校にて、GGを取得。その後、高級ジュエラーで10年に亘り、ジュエリー選びのアドバイスと販売に携わる。

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