「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」が映画の中のジュエリーを考察。今回は、映画「赤毛のアン」のジュエリーをテーマにご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2021年12月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
映画「赤毛のアン」
「映画の中のジュエリー」というテーマで2021年1月から書いてまいりましたが、今月の2021年12月がいよいよ最終月となりました。
12月は家族愛や隣人愛を意識して、不朽の名作からチョイス。私の大好きな『赤毛のアン』をご紹介します。
この映画は、カナダのプリンスエドワード島が舞台。孤児院で育ったアンが、育ての親元で人生を歩んでいく話です。ある日、アンは、母親代わりのマリラがいつも大事に持っている彼女の母親の写真が入ったロケットを生まれて初めて見ます。
ロケットとは
ロケットとは、切り抜いた写真をはめ込むくぼみがあるジュエリー。通常ケースは蓋付で、宝石や金細工で意匠を凝らしているペンダントやリング。
残念ながら、近年めっきり見ることがなくなってしまったロケットですが、紐解いていきましょう。
映画:赤毛のアン(1986年)(Anne of Green Gables) 監督:ケヴィン・サリヴァン
出演:ミーガン・フォローズ/コリーン・デューハースト
ロケットの始まり
ロケットがいつから始まったのか見つける事はかないませんでしたが、リングに蓋つきの小さなケースが付いたものがロケットの始まりの一つと言えるでしょう。
古代から、毒入り指輪や魔除け指輪の複雑な仕掛けを凝らしたものは作られていました。17世紀に入ると、蓋にダイヤモンドをセットした豪華なリングや香りを入れるポマンダーのように穴を空けてあるデザインがあります。もしかしたら、当時の貴婦人の必需品だった気付け薬などを入れたのかもしれません。又、宝石や文字などで意匠をこらした蓋を開けると、王の姿を描いた細密画が入っており、それを身につけるメモリアルジュエリーと呼ばれるものがあります。デザインは多岐に渡り、故人の髪を、水晶やガラスの間にセットしたリングやペンダントが残っています。これが、ロケットに繋がってきていると考えても間違いはなさそうです。
香りは昔あった出来事を思い出させたりするものですが、宝石を見て思い出すこともあるでしょうね。今は、スマホの時代なので、思い出の写真はいつでも見ることが出来ますが、宝石をセットした蓋の中に、大切な人の一枚の肖像をはめる作業自体が貴重なひとときだと思います。思い出と宝石が結びつくととても素敵ですね。