「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」が映画の中のジュエリーを考察。今回は、映画「ミッドナイト・イン・パリ」のジュエリーをテーマにご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2021年10月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
映画「ミッドナイト・イン・パリ」
皆さん、タイムマシンで、自分の好きな時代に行ってみたいと思ったことございませんか? 私も、まるで旅行のように時代を行き来したら楽しいだろうな・・・と思います。スペインとアメリカの合同映画「Midnight in Paris」は、まさにそれを映画化したもの。主人公ジルがパリに旅行中、深夜に道に迷っていると、自分の前に古い型の車が止まり、ジルにとってのGolden age、1920年代に連れて行かれ、現代と行ったり来たりする話です。
映画:ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris) 公開:2012年5月
監督:ウディ・アレン 出演:オーウェン・ウィルソン
1920〜30年代のドレス姿やジュエリー使い
映画のストーリーは割愛し、その1920年代から30年代の女性のドレス姿やジュエリー使いをチェックしてみましょう。
1920年代以降は、コルセットが消えてドレスはストンと直線的、丈も足を見せる長さになるなど、装いが大きく変化した時代です。1925年のパリ万博では、カルティエがアール・デコ風のダブルクリップ(※)を出品。同時期には、御木本幸吉が養殖真珠は本物の真珠であると主張し、裁判で戦っている時期です。また、シャネルが本物か偽物かは関係ない、と主張したので、本物に引けを取らない上質なアクセサリーも沢山登場します。
変革期に流行した「ダブルクリップ(ブローチ)」
ダブルクリップ(ブローチ)は、この様な変革期のジュエリーの流行の一つです。使い方としては、一緒又は別々に分けて装うことが出来るようなものです。それをヘアドレスに付けたり、ドレスの後ろ姿のベルト位置に付けたり、工夫して前衛的ファッションを楽しみます。
エルザ・スキャパレリの衣装を使った1933年のフランス映画「TOPAZE」では、布ベルトの後ろ側にダイヤモンドを配したバックルがお洒落のポイントになっています。そして、ヘアバンドの側面に押さえるブローチも、ツインの片方を使っているように見受けられます。他には、女性はたばこやお酒も飲めるようになったことから、宝飾店では煙草と口紅とパウダーが内蔵された夜会用ヴァニティケースも考案されます。
あぁ、本当に素敵! 流行は繰り返されると言いますが、現代のシンプルで機能性を重視した時代から、また無駄なほど贅を尽くしたジュエリーが流行る時代は来るのでしょうか。
※ダブルクリップ
2つのブローチを合わせて固定出来る構造のブローチ。