「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」がジュエリーの様式とその歴史を解説。今回は、イスラーム美術様式「平面の世界 幾何学模様」をご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2020年7月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
イスラーム美術の幾何学模様
幾何学模様は、ジュエリーデザインをはじめ、ペルシャ絨毯からタイル柄に至るまでよく見かけます。その文様は、イスラーム美術から来ていますので、源流に遡ってみましょう。
異文化を理解するために、私たちは聖書を読むことはあっても、クルアーン*を読む人は少数派なので、イスラームと言うと未知な文化圏と思うことがあります。7世紀から15世紀後半まで、イスラーム社会が世界で一番高度な文明を築き上げたのはご存じの通りです。
では、何故そこで幾何学模様が生まれたのでしょうか。イスラーム教は、「偶像崇拝を禁じている」のが重要な考えですから、人物や動物をモチーフにすることはあり得ないのです。目に見えない神に対する畏敬の念を表す手段と信仰は、図形のモチーフを巧妙に発展させることで表しているのです。
イスラームでは、円や球は完全な対称性を持つ最も美しい図形とされ、その基本の円を追加することによって無限の世界観を表現します。無限とは、彼らにとって神のことで、見る人に考えさせるための視覚的手法なのです。それが幾何学模様です。
具体的には、平面を調和のとれたシンメトリカルな図形に分割し、複雑に織り合わさったデザインを作り出し、無限性や中心の存在を概念としています。
図で見るとイメージしやすいです。
図案は無限にありますから、色々なデザインを見かけたら、じっくり分析してみるのも楽しいものです。
ちなみに、東京五輪のエンブレムは、幾何学模様がベースにあります。描かれていないところに幾何学があり、菱形が3種類隠れています。ご興味のある方は、あれこれ考えて楽しんでください。