インタビュー

近山晶コレクション公開!大久保洋子さん・絵弥さんにインタビュー

2022年8月30日

「鉱物や宝石を愛する人々のために」

編) お二人から、近山先生について印象に残っているエピソードがあればお伺いしたいです。

洋) ご縁あって、私もGSTVに出演させていただいておりますが、父はまさか孫まで宝石に関わる仕事をするとは思ってなかったんじゃないかしら。

絵) そうよね…、祖父が亡くなる前まで宝石とは関係のない業界で働いていました。
 祖父が亡くなった時、ちょうど30歳になった私は今後の人生をどのように生きたいかと考えていた時でした。ふと、子供の頃に遊びに行っていた祖父の家のことを思い出しました。祖父は世間一般的な「おじいちゃん」とは全く違うタイプで、一緒に遊んでくれることはあまりなく、私がいたとしても意に介さずに部屋にこもって学問を続けるような人。子供時代の私は好奇心旺盛で、研究室を覗き、そこで遊んだりしていました。その時に、「カルサイトは字を透かしてみると楽しいよ」、「これはアンモナイト。少し削ってみる?」など、宝石に触れさせてくれて。
 ちょうど七回忌の時に色々と思い出して、「祖父を夢中にさせた宝石とは一体どんなものなのだろう」と興味を持ち、英国宝石学協会の教育を受け始めました。

在りし日の展示室

洋) 父が研究熱心だったのは、鉱物や宝石を愛する日本の方々に正しい知識を得て欲しいという思いが強くあったからでしょう。そのために自分自身の目で鉱山を視察して、正確な情報を業界に発信していました。亡くなるまでその姿勢は変わらず、研鑽の日々でした。
 宝石学普及に努めていた当時、宝石用顕微鏡を某社と父で共同開発しました(当時は宝石学が今ほど発展しておらず、顕微鏡で内包物〈インクルージョン〉を発見することが宝石の特定条件であり重要な手掛かりになっていました)。
 「宝石は科学である」という信念のもと、顕微鏡の使い方をはじめ、宝石を見極めるためのたいへんに厳しい学問を習得する「近山ゼミ」を全国各地で開催して、多忙な時期を送っていたことを思い出します。アメリカ・ツーソンへは毎年2月に必ず出かけていました。世界中からの新しい情報を得たり、1年ぶりに会う方々からの知識の共有や、珍しい石の購入は非常に有意義な人生のひと時だったと思います。無駄なく有効に時間を使っていました。毎年同行していたので、学ぶことが多く、今も心の財産として数々の言葉(※)が脳裏をかすめます。世界中歩き回って、航空地図に自分の足跡を全て綿密に記入したり、イラストや地図を自ら書き、世界に類を見ない宝飾宝石事典を70歳で作成、その情熱には驚かされました。

近山先生の言葉

  • 情報と整理
  • 六十歳はまだまだ
  • その日のうちにその日のことはやり遂げる
  • 人間は究極におかれなくてはいけない、それが次のステップになる

絵) 本当にすごい!
宝石業界に携わるようになってから感じているのは宝石の持つ神秘、そして宝石学の奥深さ。携帯電話がなく今よりずっと情報を得にくい上に、海外へ気軽に行くこともできない時代に見聞をひろめ、自ら得た情報を国際会議で発表したり、国内の業者や生徒に教える為の、祖父のたゆまぬ研鑽の姿勢。販売するために石を購入するのではなく、学問用、また研究のために世界各地から様々な鉱物や宝石を収集し続けていたというのも物凄い情熱で、改めて祖父の偉大さを感じます。
 祖父の情熱そのもののミュージアムを通して、お客様にもより宝石についてご興味を持っていただきたいと思います。


※本記事のロング・バージョンは後日、前編と合わせて公開予定です。お楽しみに!

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