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宝石辞典

タンザナイトの特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説について

1995年11月25日

12月の誕生石「タンザナイト」の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説についてご紹介します。

タンザナイトとは

タンザナイトの鉱物名は「ゾイサイト」です。

目の覚めるようなブルーやバイオレットのオーロラを見せるタンザナイトは、その美しさから高い人気を誇っています。近年では需要が急増しており、カラーストーンの中ではサファイアを除いてトップクラスの売上を記録しています。ダイヤモンドの約1,000倍の希少性を持ち、鉱床の寿命もわずか10年ほどしか残されていないことから、タンザナイトは今世紀を代表する人気の宝石です。

タンザナイトの特徴
原産地 タンザニア
ライラック、ブルー、パープル、ファンシーカラー
属性 ゾイサイト
硬度6.00 - 7.00
屈折率1.691 - 1.700
比重3.35
その他12月の誕生石

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タンザナイトの伝説・歴史とは

1967年に発見されたタンザナイトは、まだ伝説となるほどの長い歴史はありませんが、すでに世界中で高い人気を誇り、大きな注目を集めています。

タンザナイトの発見

タンザナイトが知られるようになる以前、ゾイサイト(タンザナイトの鉱物学名)は、スロベニアの貴族ゾイス・フォン・エーデルシュタインにちなんで名づけられていました。しかし当時は、あまり広く知られることはありませんでした。不透明なピンクやアップルグリーンの種類がジュエリーに使われることはあったものの、ゾイサイト自体が大きな人気を集めることはなかったのです。

「ゾイサイト」とは

タンザナイトの鉱物名は「ゾイサイト」です。
ブルーのものは「タンザナイト」として知られていますが、それ以外にもさまざまなバリエーションがあります。たとえば、緑色の「グリーンゾイサイト」、ルビーを含んだ不透明な緑色の「ルビーインゾイサイト」、そして不透明なピンク色の「チューライト」などがあります。

それが大きく変わったのは、1967年。乾燥したキリマンジャロ山のふもと、タンザニアのメレラニでのことです。
落雷によって小さな野火が発生し、その熱でゾイサイトのワインのような紫色の小石が鮮やかなブルーへと変化したといわれています。この石を発見したのは、タンザニアに暮らすマサイ族の牧夫だった――そんな伝説が語り継がれています。

タンザナイトの原石

このタンザナイト発見の物語は、タンザナイトそのものに劣らず魅力的です。
誰が最初にこの宝石を発見したのかは定かではありませんが、もっとも信頼性の高い説として語られているのは、キリマンジャロ山麓のメレラニ丘陵を旅していたンドゥグ・ジュマンネ・ンゴマが青い結晶を見つけたという話です。
また別の説では、地元民のアリ・ジュヤワツが半透明のタンザナイトの結晶を発見し、その場に偶然居合わせたのが、探鉱者のマヌエル・ドゥソウザだったとされています。ドゥソウザはその地域でルビーを探しており、最初は新たなサファイアの鉱脈を見つけたと思い込んでいました。しかし、結晶のさまざまなブルーの色合いや複雑な化学組成により、宝石学者の手によってそれが「タンザナイト」であることが明らかにされたのです。

興味深いことに、伝説的なスコットランド人宝石学者キャンベル・R・ブリッジズは、1967年にティファニーの依頼でタンザナイトを調査していた際、タンザニアでツァボライトを発見しています。彼はタンザナイトをアメリカに持ち帰り、米国宝石学会(GIA)の研究機関(Gem Trade Laboratory)で鑑定を依頼しました。こうしてタンザナイトは、ニューヨークを拠点とするジュエラー「ティファニー」に届けられ、瞬く間にアメリカの宝石市場でその名を広めることとなったのです。

タンザナイトの名前の由来

ルイス・コンフォート・ティファニーの曾孫であり、後にティファニー社の代表取締役社長となるヘンリー・B・プラットは、その美しさにすぐに魅了されました。しかし、当初の宝石学名である「ブルーゾイサイト(Blue Zoisite)」の名称に懸念がありました。英語で発音すると「ブルースーサイド(Blue Suicide/青い自殺)」のように聞こえてしまうからです。そこで、より魅力的で流行に合った名称がつけられることになり、この希少でエキゾチックなアフリカ産の宝石は新たに「タンザナイト」という名前になりました。

1968年10月の正式発表の際、プラットは「これまで2000年以上の間に発見された中で最も美しいブルーの宝石だった」と語っています。「20世紀の宝石」とも称され、タンザナイトの青紫色の輝きは瞬く間に宝石界を席巻しました。

タンザナイトのジュエリーの需要は急激に高まり、1998年と1999年にはタンザナイトは世界で最も売れたカラーストーンとして報告されています。現在でもその人気は衰えず、サファイアを除けば、他のどのカラーストーンよりも高い売上を誇っています。

人気が高じて12月の誕生石へ

タンザナイトの人気が認められ、2002年にタンザナイトは宝石業界の公式誕生石リストに加わりました。これによ李、タンザナイトはターコイズとジルコンと並び、12月の誕生石のひとつとなったのです。1912年にこのリストが制定されて以来、内容が変更されたのは初めてのことであり、この出来事は決して小さな意味を持つものではありません。正式に誕生石として認定された今、タンザナイトは新しい人生の門出や始まりを祝うのにふさわしい宝石として、ますます注目されるようになっています。

この象徴性は、マサイ族の伝統にも通じています。マサイ族にとって青は神聖な精神の色とされており、出産した女性には青いビーズや衣服を贈る慣わしがあります。この伝統は現代にも受け継がれており、現在ではマサイ族の首長たちは赤ちゃんが生まれると、妻にタンザナイトを贈るようになっています。この贈り物には、子供が健康に育ち、積極的で実りある人生を歩めるようにという願いが込められているのです。

宝石界でも大流行

タンザナイトは、現代の宝石界において圧倒的な人気を誇っています。かつてファッションブランド「グッチ」で”モード界の異端児”といわれたトム・フォードは、タンザナイトをはじめとするエキゾチックな青い宝石をモデルたちに身につけさせ、キャットウォークを彩る華やかなコレクションを発表しました。

また、2004年のアカデミー賞授賞式では、主演男優賞を受賞したショーン・ペンの母で女優のアイリーン・ライアンが、目の覚めるようなタンザナイトとダイヤモンドのクロス・ペンダントを身につけて登場。その美しさは息子以上に注目を集め、会場のスポットライトをさらってしまったほどです。

タンザナイトの特徴・特性とは

PT950 タンザナイト(特優) H&Cダイヤ(リリーダイヤカット) & ダイヤ リング TA 23.701ct D 3.63ct(LI) D 0.06ct

タンザナイトの多色性

タンザナイトの大きな魅力の一つは、単なる澄んだ真夜中の青ではなく、もっと複雑で多彩な青色を呈している点にあります。これは、多色性と呼ばれる性質によるもので、見る角度によって色が変わる特徴です。タンザナイトは光に非常に敏感で、日光の下では青みが強く見える一方、白熱灯やキャンドルの灯りのもとでは、ピンクがかったバイオレットに見えることが多いのです。最高品質のものはどんな光源でも濃いブルーを保ちますが、多くの場合、両方の色味が同時に感じられます。

この他色性(不純物による着色)を持つタンザナイトの色の鮮やかさは、含まれるバナジウムの量によって決まります。

パステルカラーの柔らかな色合いか、それとも深みのある濃い色を選ぶかは好みや予算によりますが、タンザナイトの色彩は大きなサイズの石ほどより鮮やかに輝く傾向があります。
一般的に、小さな石で濃い色のものはあまり見られませんのでご注意ください。

タンザナイトの内包物

タンザナイトの結晶は、多くの場合インクルージョン(内包物)がほとんど見られません。タンザナイトの標準レベルは「アイクリーン」になります。

「アイクリーン」とは

裸眼から約15センチメートル離して宝石を見たときにインクルージョン(内包物)が見えない状態。

シェイプとカット

タンザナイトにはさまざまなシェイプやカットがあります。なかでもオーバルやクッションカットが最も多く見られますが、ラウンドやその他の形状もあります。カットの種類に関わらず、ブリリアンス(輝き)の強いものを選ぶと良いでしょう。濃いブルーは人気ですが、大きすぎたりカットが不十分だったりすると、輝きが失われて暗く沈んだ色に見えてしまうことがあります。

極めて大きなサイズのタンザナイトも存在しますが、ジュエリーとして特に人気のサイズは20カラット以下とされています。

タンザナイトの美しい色彩やクラリティ、そして多彩で想像力豊かなカットは目を引く魅力があります。ファッショナブルなドロップイヤリングやペンダントは、タンザナイト本来の特徴を際立たせます。また、大きなカラット数のソリティアリングのような、石を高く持ち上げるようにセッティングしたデザインは、そのきらめきを最大限に引き出し、多くの人の注目を集めています。

タンザナイトの採掘場「タンザニア・メレラニ」

タンザナイトは世界で唯一、タンザニアのメレラニでしか採掘されないため、その希少性も人気の大きな理由となっています。

タンザナイトが形成されたのは約5億8,500万年前のことで、何らかのきっかけでバナジウムがランダムに入り込んだためとされています。この現象は非常に珍しく、専門家の中には「タンザナイトが他の場所で形成される可能性は百万分の一ほどだ」と考える人もいます。
タンザナイトの鉱床はモザンビーク造山帯の変成岩、大理石、片岩に存在し、キリマンジャロ山麓の暑い平原から登った先に広がるメレラニの低い丘陵地帯にあります。鉱床は地表から約41度の角度で一定間隔に湾曲し、そこにタンザナイトの晶洞が形成されています。

約10数平方キロメートルの採掘エリアは、タンザニア政府によりA〜Dの4つのブロックに区分されています。
そのうちDブロックは採掘地域を指す名称ですが、伝統的にこのDブロックからは最高品質のタンザナイトが多数発見されてきたため、「Dブロック」は最高品質の代名詞としても使われています。ただし、良質なタンザナイトは他のどのブロックからも産出されています。

最も規模が大きく最新技術を導入して操業しているCブロックでの採掘量は、原石1トンあたり平均わずか22カラット(約4.4グラム)に過ぎません。また、タンザナイトの産出量は徐々に減少しており、多くの専門家は「数年以内にタンザナイト鉱床が枯渇する」と予測しています。この希少性の高まりが、タンザナイトの評判をさらに高めているのです。

色の濃さと等級制度について

タンザナイトにはいくつかの等級制度がありますが、いずれも主に色のクオリティを評価するためのものです。

ルビー、サファイア、エメラルドと比べると、タンザナイトにはインクルージョン(内包物)がほとんど見られないことが多いため、色が評価の最も重要な要素とされています。中でも、全採掘量のわずか1%にも満たないトップグレードのタンザナイトは、深く濃いインディゴブルーの色合いが特徴です。

タンザナイトの原石は、青みがかった赤ワイン色の結晶として産出されるため、実質的にほとんどのタンザナイトにおいて、色の質を高めるため加熱処理が施されています。この処理は一般に認められた永続的な処理で、タンザナイトの発色要素であるバナジウムの状態を安定させる目的があります。この加熱処理によって通常の鮮やかなブルー〜バイオレットのタンザナイトが生まれる一方で、まれにピンクタンザナイト、グリーンタンザナイト、バイカラータンザナイトなどのファンシーカラーが現れることもあります。これらはタンザナイト本来の特性を保ちながら、独自の色彩を持つ極めて稀少な宝石であり、コレクターの間でも高い人気を誇っています。

まとめ

「タンザナイト」の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説・歴史についてご紹介いたしました。

タンザナイトからは、洗練された雰囲気、個性、そして自信が自然とにじみ出ます。そのタンザナイトジュエリーはあらゆる年代に美しく映え、若い人には自由な精神を、年配の方には上品な気品を引き立ててくれます。しかしタンザナイトは非常に希少で、その価値は日々高まり続けています。すでにタンザナイトを所有している方、あるいは唯一の鉱床が枯渇する前に手に入れることができた幸運な方は、20世紀を代表するこの見事な宝石を楽しむだけでなく、それを次の世代へと受け継ぐ大切な財産の管理人でもあるのです。

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