「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」が映画の中のジュエリーを考察。今回は、映画「青い紅玉」のジュエリーをテーマにご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2021年5月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
映画「青い紅玉」
シャーロック・ホームズの観察力と機知に富んだ謎解きに引き込まれるサー・アーサー・コナンドイルの推理小説の映像化バージョン。そのうちの一つ『青い紅玉』に出てくる宝石を取り上げたいと思います。
この題名を見ると、宝石に詳しい方なら変な題名だと違和感を持つかもしれません。しかし、それにより一層どんな宝石が出てくるのか、観る前から期待が大きく膨らみますね。
ストーリーは、伯爵夫人の外出中に、大事な宝石が何者かに盗まれ、その犯人を特定しようとする物語。やっぱり! 宝石が出てくる映画は、大体、盗難がつきものですね。
映画:シャーロック・ホームズの冒険(テレビドラマ)第1シリーズ 第7話
原作:サー・アーサー・コナン・ドイル 放送期間:1984年~1994年
青い紅玉とは
紅玉とはルビーの和名です。青いルビー?サファイアかしら? と考えてしまいそうです。原題『ザ ブルー カーバンクル』で考察してみましょう。
カーバンクルという古語は、諸説ありますが、赤いガーネットを指したり、カボションカットされた宝石を指したり、時代や人によって解釈が変わっているようです。
一方、医学用語で、毛根炎の感染症の皮膚が腫れ赤くなった部分を今でもカーバンクルと呼ぶそうです。どうやら、赤くてぷっくりした形をカーバンクルって呼ぶのですね。それが青いカーバンクルとなると、一体どちらの色がでてくるのでしょうか。
ガチョウの口に隠されていた大粒の青い宝石を眺めるホームズ。やっぱり青だったか、と私は何故か一安心。謎解きのようですが、その宝石が一体何の宝石なのか、キーワードを拾ってみました。
「ダイヤモンドだ。ガラスが切れる」「ダイヤモンドより高価だ」「これがブルーカーバンクル」「中国の南、アモイ川の土手で発見された宝石」「発見されて20 年」「カーバンクルの特徴を持っていて青い」「炭素の結晶」「40 グレイン」もう???混乱状態です。
ガーネットで青はない、アモイは大陸楯状地帯に入っていないからダイヤであるはずがない、と考えつつ、見た目はウズラの卵ぐらいだから、それが40グレイン(※) だと、ダイヤやサファイアだったら、小粒になってしまいます。見方を変えて、作家の生きた時代では、後にホープダイヤと呼ばれるブルーダイヤは、1820年にイギリス国王ジョージ4 世の購入品として市中で知られていたので、それをイメージして架空の宝石を描写したのかもしれませんね。
※1グレイン
宝石の重量単位では、約1/4cts=約0.05g 。40グレインでは約10cts ~ 13ctsになる。