「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」が映画の中のジュエリーを考察。今回は、映画「泥棒成金」のジュエリーをテーマにご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2021年2月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
映画「泥棒成金」
ハリウッド映画『泥棒成金』は、米国の小説が元となって映画化された、富豪からだけジュエリーが深夜に盗まれていくというストーリー。
グレース・ケリーの美しさにはため息が出るほどですが、どんな宝石類が出てくるのかという期待を裏切らないことと、南仏カンヌのリヴィエラ風景は、観ているだけで自分がヴァカンスを満喫している気分になる素敵な映画です。そこに出てきた宝飾品の中のひとつを取り上げて考察してみたいと思います。
映画:泥棒成金(To Catch a Thief) 公開:1955年10月
監督:アルフレッド・ヒッチコック 主演:グレース・ケリー
羽根の宝飾品
私が注目したのは、テーマを決めて開催される豪華な舞踏会の場面です。ドレスコードが18世紀時代の衣装ということから絢爛豪華な世界が繰り広げられます。そこで私が目を付けたのは、インド風の装いの男性がターバンに付ける羽根付きの宝飾品です。
ターバンは、主にインド・パキスタンから中東にかけて、ヒンドゥー教イスラム教圏の方々が巻いていますが、君主達がターバンに宝石だけ付ける場合があったり、宝石と共に羽を挿す場合があったりします。例えば、イギリスに渡った世界最古のダイヤモンドと言われるコ・イ・ヌールも、元はターバン用で使用されていたものが外され再研磨され、王冠用のダイヤになってしまいました。元ターバン飾りであったということを忘れてはいけないですね。
18世紀前半に作られたザクセン候アウグスト3世の帽子のつばを折り曲げて留める為のジュエリーは、現在もドレスデンに残っていますが、主にルネサンス頃までは、男性貴族の方が女性より宝飾品とレースで着飾っていたので、君主が帽子飾りをいくつか持つのは普通だったのでしょう。
18世紀になると女性も着飾るようになり、19世紀には、バッスルスタイルに合わせた羽飾り付き宝飾品である“エグレット”(エイグレットとも言う)が広く流行します。元をたどれば、マハラジャ達のターバン飾りから発想を得たものと考えてもいいでしょう。
おしゃれの視点から、ドレスの色と合わせた帽子に付けるジュエリーなんて素敵ですよね。