(番組ガイド誌「GSTV FAN」2023年1月号の掲載記事をWEB用に再編集しております)
様々な環境と地質作用により形成される「宝石」。その形成プロセスは主に5つで、前号でご紹介した火成岩起源の宝石に引き続き、今回は「ペグマタイト」起源の宝石を近山先生が世界中から集めたサンプルとともにご紹介します。
GSTV FAN読者で宝石好きな皆様でも、ペグマタイトから生まれた宝石はどういったものがあるのか、ご存じないかもしれません。実は皆さんが購入してくださっている多くの宝石はこの母岩から採掘されたものです。色が美しく、純度と透明度が高い、サイズが大きな石が採取されやすいのがペグマタイトです。
Type2.ペグマタイト起源の宝石
ペグマタイトは火成岩の一種。大きな結晶からなる岩石で、巨晶花崗岩(きょしょうかこうがん)とも呼ばれます。マグマの温度がさらに低下していくと結晶分化作用が進み、SiO2の成分や揮発性成分が多くなります。すると残留溶液の濃集により流動性が上がって残留したマグマの温度も800度〜500度に下がり、より多くの元素が拡散しやすくなります。そのおかげでイオン半径の大きなフッ素やホウ素などの元素が集まって結晶が大きく成長できる空間もできるため、残留溶液がゆっくりと冷えていく過程でより多くの大きな宝石結晶が形成されます。このような濃集した鉱床がペグマタイト鉱床と呼ばれます。
代表的なペグマタイト起源の宝石は、トルマリン、トパーズ、アパタイト、ベリル(アクアマリン、モルガナイト)、ルチル、クリソベリル、クンツァイト、ガーネット(スペサルティン)、ジルコン、ロードクロサイト、蛍石、長石、雲母(レピドライト)、石英。
希少な宝石としては、ダンブライト、ユークレース、デュモルチェライト、ジェレメジェバイト、シーライト、モンテブラサイトなどが挙げられます。ブラジル、マダガスカル、ナミビア、モザンビーク、ナイジェリア、タンザニア、イタリア、ロシア、アメリカ、中国、パキスタン、アフガニスタン、ミャンマーなどが名産地として知られています。
日本にも三大ペグマタイト鉱床があり、福島県石川町の水晶山帯、岐阜県の苗木山帯と長野県の木曽田立、滋賀県の田上山などからトルマリン、トパーズ、ベリル、水晶、アメシストなどが産出されていました。また、ペグマタイトに放射線元素や希土類元素が濃集するため、その影響で、本来は無色の水晶がスモーク水晶、黒水晶、紅水晶となります。桃色の長石も珍しくありません。
「近山晶コレクションより」
1:ペグマタイトに含まれる代表的な鉱物;長石、スモーク水晶、雲母
2:世界最大のペグマタイトの名産地であるブラジルのミナスゼライス州から産出されたペグマタイト中のアクアマリンとブラックトルマリン
3:マグマの冷却につれ、析出した成分から大きな結晶が成長します。モルガナイトはその一例で、マンガンの二価電荷によりピンク色が形成されます
4:ブラジルのパライバ州のペグマタイト鉱床に含まれるパライバトルマリン
5:ブラジルのミナスゼライス州から産出されたウォーターメロンと呼ばれるトルマリンの結晶群
6:パキスタン北西部インダス流域に分布するペグマタイト鉱床から、美しい宝石質のインペリアルトパーズが産出されています
7:インカローズという愛称がつくアルゼンチンのcapillitas鉱山から産出されたロードクロサイト(菱マンガン鉱)の原石
8:カナダのオンタリオ州のペグマタイトに含まれる美しい六方晶系の黄色アパタイトの結晶
9:ブラジルのミナスゼライス州のペグマタイトから産出される非常に希少なベリリウムを含むユークレースの結晶
10:希少宝石として人気なデュモルチェライトはペグマタイトや変成岩の片麻岩から産出。透明度と品質の良いものはやはりペグマタイト起源です。アメリカ、ペルー、ブラジル産
11:日本の三大ペグマタイトの産地・岐阜県苗木地方から産出された大変美しい紫色の蛍石の集合体
GSTVジェムミュージアム
完成した「GSTVジェムミュージアム」。日本における宝石研究の大家、近山晶先生が収集した貴重な試料を展示し、日本の宝石の歴史を後世に伝えていきます。
「GSTVジェムミュージアム」はアヒマディ博士とそのスタッフの協力により貴重な標本が整理され、展示されてます。
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