(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年12月号の掲載記事をWEB用に再編集しております)
3万点とも言われている「近山晶の宝石コレクション」。どのような宝石試料が集められてきたのか、その宝石はどのような地下環境で形成されたのか、どのような成長形で、どこで発見されたのか、なぜ異なる生成条件で同じ宝石が生まれるのか…。博物館へ移動している際に、様々な視点から興味を持って、注意深く観察してみました。
地球の石は岩石や鉱物や生物起源の堆積物からできており、その85%は結晶でできています。酸素、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、鉄をはじめとするさまざまな元素が結合することにより、原子が特定の方向で配列し、同じ法則で積み重なり、鉱物の結晶が形成されます。特に「宝石」になりうる結晶は特別な存在。適切な成長条件で大きく成長した結晶で、とても美しく、大変希少であることが条件となります。残念なことにその多くは、結晶成長段階で生じる傷や人間の手によって採取される際に破壊されてしまうケースも多く、天然、完全、透明、清澄といった奇跡的な姿の宝石結晶は、研磨された宝石よりもはるかに高価値です。
地球深部のマグマの活動によって、一定に保たれた圧力・温度下で鉱物の結晶が形成されます。また、地表に向かうマグマの熱水やガスなどによっても様々な鉱物が誕生します。地球規模のプレートの移動や造山運動などによって、すでに存在した鉱物が融解し、再結晶化し別の鉱物に生まれ変わることもあります。宝石も同様に様々な環境と地質作用により形成されますが、主に5つの形成プロセスが考えられます。
近山先生が世界中の鉱山や国際ミネラルショーなどで集めたサンプルをこの5つのタイプに分類し、紹介いたします。
Type1.火成岩起源の宝石
地下深部火成活動と火山活動によって岩石が融けてマグマとなり、マグマが地表に向かって上昇する際に冷えて固化し、細かい粒子の組織を示す「火成岩」が形成されます。地表に噴火したものは粗い粒子の組織を示す「火山岩」となります。マグマの溜りが徐々に冷却する過程で、鉱物の種類によって凝固点が異なるため、凝固点の高い鉱物の順番で結晶化していきます。
先に1500度以下では橄欖石やCaに富む斜長石(アノーサイト、ラブラドライト)、1400度以下では輝石、1300~1200度以下では角閃石とNaに富む斜長石(アルバイト)、1100度以下では雲母やカリ長石や石英に晶出し、沈殿していきます。
このような過程で、特有な元素や鉱物が濃集して火成鉱床(正マグマ鉱床)が出来上がり、その代表的な宝石はダイヤモンド、ペリドット、エンスタタイト、普通角閃石などです。
「近山晶コレクションより」
1:ロシアのシベリアのMirnyダイヤモンド鉱山から産出されたダイヤモンドと母岩のキンバレー岩
2:多くのペリドットを含む橄欖岩及びミャンマー産宝石品質のペリドット結晶とカット石
3:アメリカから産出された頑火輝石(エンスタタイト)の母岩とインド産の単結晶とカボションカットにされた4条スターエンスタタイト
4:日本の福井県から産出された普通角閃石(Hornblende)とカボションカットされたスター角閃石
特にアフリカ大陸(南アフリカ、ボツワナ、コンゴ、タンザニア、エジプトなど)、アメリカ大陸(アメリカ)、アジア大陸(ミャンマー、中国、スリランカ、パキスタン)などの国に多く産出されています。
GSTVジェムミュージアム
完成した「GSTVジェムミュージアム」。日本における宝石研究の大家、近山晶先生が収集した貴重な試料を展示し、日本の宝石の歴史を後世に伝えていきます。
「GSTVジェムミュージアム」はアヒマディ博士とそのスタッフの協力により貴重な標本が整理され、展示されてます。
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