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インタビュー

結晶の世界(後編)【近山コレクション見聞】

2023年9月30日

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2023年10月号の掲載記事をWEB用に再編集しております)

 様々な環境と地質変化により形成される「宝石」。前号までにその起源と主要な5つのプロセス、それに加えて有機生物起源の宝石について解説してきました。今号では引き続き結晶について、近山先生が世界中から収集したサンプルとともに紹介します。

Type7.結晶の世界(後編)

 宝石用原石としてカットされる結晶。「完全」「透明」「清澄」なイメージがあり、近山先生が長年集めた宝石の結晶はまさしくイメージそのものです。
 結晶学的に、結晶は規則正しく成長した特徴を持ち、対称の要素があり、対称心・対称軸・対称面という3つの要素から結晶の形態を7つの晶系に分類されています。
近山晶コレクションの「Crystals World」陳列コーナーには近山先生が宝石学教育のために集めた7つの結晶系に属する、世界各国から集めた大変美しい宝石のあらゆる結晶が並んでいます。
 前編では等軸晶系(立方晶系)、六方晶系、三方晶系の結晶をご紹介しました。今号では正方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系の結晶について解説いたします。

正方晶系

3本の結晶軸が互いに直交し、うち2本の側軸が同じ長さで、ほかの1本の上下軸の長さは異なるもの。
ジルコン、ルチル、アイドクレーズ、スキャポライト、アポフィライト

1

1:ブラジル・バイア州Conquista産ルチルの結晶と双晶。ルチルは和名で金紅石とも呼ばれ、火成岩や変成岩などから産出される。また、針状として石英中に入る場合が多い、スタールビー/サファイアのスター効果もルチルによって引き起こされている

2

2:ブラジル・エスピリトサント州イグアス産のスキャポライト(和名:柱石)。変成岩から産出され、蛍光性を持つものと蓄光性を持つものもある

3

3:和名は魚眼石でキラキラとした光沢を示すアポフィライト。火山岩の空隙やスカルンから産出されるコレクターに人気のレアストーン。インド・マハーラーシュトラ州Jalgaon産アポフィライトの結晶集合体

4

4:正方晶系の代表的な宝石であるジルコン。地球上で広く産出され、オーストラリア・ジャックヒルズで産出されたジルコンは地球で最も古い鉱物で、44億年前に形成された。ブラジル・ミナスゼライス州ポソス・デ・カルダス産

斜方晶系

3本の結晶軸が互いに直交し、3本の結晶軸の長さは異なるもの。
トパーズ、クリソベリルグループのアレキサンドライト、クリソベリルキャッツアイ、アイオライト、ペリドット、タンザナイト、セレスタイト、シリマナイト、シンハライト、コーネルピン、スフェーン、アラゴナイト

5

5:地球深部のマグマが上昇し、冷えて結晶に成長するペリドット。美しい緑色は主にカシミールやミャンマーから産出される

6

6:ペグマタイトから無色、黄色、ピンク、青色などの色を示すトパーズが産出。ブラジルやパキスタン産のインぺリアルトパーズは大人気

7

7:マダガスカルのマハジャアンガ州産セレスタイトの結晶集合体。セレスタイトの和名は天青石で、空の青色を思わせる

8

8:チタン石とも呼ばれ、クロムの影響で彩度の高い黄緑色を発色し、ダイヤモンドのような輝きを持つ人気宝石・スフェーン。ブラジル・ミナスゼライス州Capelinha産スフェーンの単結晶

9

9:ブラジルのミナスゼライス州産、双晶を持ったクリソベリルの結晶。ちなみにクリソベリル(和名:金緑石)の中でもキャッツアイは代表的な変種で、希少価値の高い宝石

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10:方解石と同じ鉱物で、六角形の柱状の結晶に見えるが、3つの平行四辺形の結晶から集まった三連双晶であるアラゴナイト。モロッコのフェーズーメクネス州から産出された褐色の結晶集合体

11

11:アイオライト(菫青石)は高温低圧型の広域変成岩から産出される。3色を楽しめる多色性の非常に強い宝石、主な産地はスリランカ、ミャンマー、インドなど

単斜晶系

3本の結晶軸の長さはそれぞれ異なり、2本の側軸が直角でない角度で斜交し、上下軸がこれらの一方だけに直交するもの。
クンツァイト、ヒデナイト、長石、ユークレース、雲母、砂漠のバラ(石膏)、ブラシリアナイト、ダイオプサイド

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12:ブラジルのミナスゼライス州ボカイウヴァ産の、淡い黄色のユークレース結晶。ベリルやトパーズに類似した宝石のユークレースは緑青色のものがジンバブエからよく産出され、透明度の高いものはブラジルとコロンビアから産出されている

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13:ブラジルのミナスゼライス州産クロム・ダイオプサイドの結晶集合体。ダイオプサイトの和名は透輝石で、クロムが含まれるダイオプサイドは緑色を示し、火成岩から産出された濃厚な緑色の結晶は大変希少

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14:スポジュメンの変種で、マンガンによってピンク色が形成されるクンツァイト。ペグマタイト中によく産出され、アフガニスタン、ブラジル、アメリカ、ナイジェリアなどが名産地。無色はスポジュメン、緑色はヒデナイト、黄色はトリフェイン

15

15:砂漠のバラとも呼ばれる石膏。かつて砂漠地帯に水があって、水に溶け込んだミネラルから再結晶したバラのような花状の結晶。サハラ砂漠が最も名産の地

三斜晶系

3本の結晶軸の長さはそれぞれ異なり、3本の結晶軸が互いに斜交するもの。
カイヤナイト、アマゾナイト、アンブリゴナイト

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16:微斜長石という種類に属しているアマゾナイト(天河石)。緑色に白色の縞模様のような構造を示す美しい半貴石。ブラジルやカナダ、ウイグルから高品質の石が産出されている

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17:カイヤナイト(藍晶石)。3つの方向にへき開があり、刃のような青い結晶の積み重なりとなっている。透明度の高い結晶は大変希少で、ブラジルやタンザニアなどが主な原産地

 前号から結晶について、コレクションとともにご紹介いたしました。ちなみに結晶のコレクションで3種類の日本式双晶が揃っていることは非常に貴重で、大変魅力的です。このようなとても興味深い「結晶の世界」の神秘。写真だけでなく、実際にGSTV宝石博物館・近山晶コレクションに足を運んでいただいて、是非自分の目であらゆる角度から眺めて、その美しさ、多様性、魅力を探求しに来ていただけましたら嬉しいです。

18

18:84度の角度で接合した双晶と76度で接合した水晶の双晶を是非自分の目で確かめにきてください。大変希少な双晶がこの博物館に揃っており、とても贅沢な体験になります

19

19:2つ以上の単結晶から接合してできた双晶を多く展示してあります。水晶の双晶は十数種類もあり、代表的なものは日本式双晶、ドフィーネ式双晶、ブラジル式双晶など。日本式双晶はさらに3種類タイプがあり、V字型双晶、ハート型双晶、軍配型双晶で、薄い平板連晶となっています

※記事中の鉱物などの写真は、近山晶コレクションより選別され、撮影されたものです。

阿依 アヒマディ(あい あひまでぃ)

Tokyo Gem Science社の代表兼GSTV宝石学研究所の所長。
理学博士・FGA。国際鉱物学会(IMA)宝石素材委員会日本代表。国際宝石学会理事。京都大学理学博士号取得後、全国宝石学協会 研究主幹を務め、2012年にGIA Tokyoラボを立ち上げる。現在はTokyo Gem Science社の代表およびGSTV宝石学研究所の所長として、宝石における研究、教育セミナー、宝石鑑別などの技術サポートを行っている。宝石の研究、鑑別に関して日本を代表する宝石学者。

> 阿依 アヒマディのプロフィール・Q&A

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GSTVジェムミュージアム 近山晶 宝石コレクション

完成した「GSTVジェムミュージアム」。日本における宝石研究の大家、近山晶先生が収集した貴重な試料を展示し、日本の宝石の歴史を後世に伝えていきます。

スタッフ
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「GSTVジェムミュージアム」はアヒマディ博士とそのスタッフの協力により貴重な標本が整理され、展示されてます。

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