宝石の街ドイツ、イーダー・オーバーシュタインでベルント・ムンシュタイナー氏の特別展が10月上旬まで開催されていました。前回に引き続き、この特別展に際して行われたベルント・ムンシュタイナー氏のインタビューの内容を皆様にご紹介いたします。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」 2021年12月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
特別展の概要
【会期】
【場所】
【名称】
2021年8月13日より10月8日まで
ヤコブ・ベンゲル財団博物館(ドイツ、イーダー・オーバーシュタイン)
“Twin Peaks ‒ Art and Design | Impressionen in Achat von Dieter Lorenz und Bernd Munsteiner”
「2つの頂点 ― アートとデザイン、メノウのインプレッション、ディーター・ローレンツとベルント・ムンシュタイナー」
特別展に寄せたインタビューにて(続編)
Q. あなたは石のカットを新しいコンテンポラリーに変革しました。これからも石の研磨をされますか、それともジュエリーも作る予定ですか?
A. 最初は研磨だけをしていましたが、その後ジュエリー製作にも関わりその仕組みも学びました。やるべきことは多くありましたが、教えてくれる人はいませんでした。
ルネッサンス時代から今日まで、世の中の99%の宝石は伝統的なカットが施されており、新たな手法を実践するのはとても困難であったと思います。
私は伝統を理解するために博物館へ行き、そこで新たな工具に着目しました。宝石研磨に大きな改革をもたらすかもしれないと感じました。そして、その工具でアゲートにグラフィカルなデザインを施すことができたのです。
信じられないかもしれませんが、私はクリスタルを見ながらクリスタルの中に住んでいました。最初は、大きなクリスタルに色々な工法を試してみることから始めました。
1990年代に私は840kgのクリスタルに出会い、そのうち50kgを使って新たな構想をもとに新しい作品を創作しました。
その作品をアップルコンピュータの初代CEOであったマイケル・スコット氏がとても気に入り、その後の私の研究に多大なる応援をしてくれました。
Q. 石があなたに語ったストーリーの中で、一番好きなのはどれですか?
A . 1974年から毎年ブラジルの鉱山へ行きました。
クリスタルの生まれるオーラがストーリーになり、それは新しいカットの始まりを意味します。
家に帰り、カットを考えながら絵を描きます。もちろんインクルージョンもアイデアの参考になります。
Q. 鉱山から見つけた原石は十分綺麗だとおっしゃいましたが、なぜ天然の形を変えてまでカットするのですか?
A . ジェムストーンの歴史から見ると、石は光と輝きが織りなす存在です。人がジェムストーンの魅力に魅せられる、私もそうなのです。
宝石学の専門家として私は宝石の屈折率をよく分かっています。クリスタルは光の屈折を一番綺麗に表現できるのです。
Q. 光の屈折は石のカットに大きく影響するということですね。あなたの作品の中に「教会の窓」という作品がありますが、それはあなたが住んでいる村の教会のためにあなたの息子さんと一緒に作ったと聞いています。その作品は、あなたの作品の中どれくらい重要な作品ですか?
A . 私はその教会の大きな窓を見た時、一瞬で恋に落ちてしまいました。
私は自分の成し遂げたいこととして、窓をすべてアゲートで表現したいと考えました。
実は当初、トムはアゲートにあまり興味を示さなかったのですが、私と色々な話をしているうちにこの取り組みの意義を感じてきたようでした。
私はブラジルへ行き1トンのアゲートを買い、それを1.5mm ~2mmにスライスして、3~4年かけて組み立てました。それは永遠に残る作品です。
私自身初めてこの作品を見たときの衝撃は今でも鮮明に覚えています。
陽光の当たり方によって、その色味、美しさが絶妙な変化を見せるのです。
約8,000ピースの三角形と正方形からなる様々な天然模様のあるアゲートを使ったこの作品は、非常に高い精度をもって隙間なく作られています。
次回、この教会の窓について私が実際に見て感じたことをもう少し深掘りしていきたいと思います。
こちらの記事もオススメ
-
ベルント・ムンシュタイナー氏特別展 ─ 第一回 ─【ストーンカメオ講座】
日本と同様に、対面型イベントの延期・縮小が続くドイツですが、宝石の街イーダー・オーバーシュタインでベルント・ムンシュタ ...
続きを見る