「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」が映画の中のジュエリーを考察。今回は、映画「プラダを着た悪魔」のジュエリーをテーマにご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2021年9月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
映画「プラダを着た悪魔」
この映画は、ブランドの服やバッグが登場し、華やかなファッション業界の一部を垣間見られることと、コーディネートのヒントを得られることから、ご存じの方も多いと思います。モデルとなった実在のファッション雑誌のカリスマ編集長ってこんななの? と驚きをもって見入ってしまう私は、野次馬的? そんな中で、編集長が青色について、微妙な違いが明確に存在すると語る部分を取り上げたいと思います。
映画:プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada) 公開:2006年11月 監督:デヴィッド・フランケル出演:サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ 他
明確に存在する微妙な青の違い
この映画のストーリーは、有名ファッション雑誌の編集長の第二アシスタントとして入社したものの、実はファッションに興味のなかった主人公が、編集長の横暴ぶりに振り回される話です。
ブルーの2 本のベルトのうち、どちらがその服に合うかどうか真剣に話し合っている場面。たいした違いがないと思ったアシスタントは思わず吹き出してしまうのですが、編集長は、どのブルーでもれっきとした違いがあり、どの青を流行させるかは自分たちが決めている。ここで決めたことが流行となり、そこから大量生産された青色のセーターをあなたは着ているじゃないか、とアシスタントの理解が浅いことを指摘します。
編集長の言う青とは、ターコイズブルー、ラピスブルー、セルリアンブルー。それらの青は、実は宝石の色から派生して名付けられています。一般的に言葉で表現すると、ターコイズはロビンス・エッグ・ブルー※のようなブルー、ラピス・ラズリは深みのある紫が入った青で、瑠璃色と表現されるブルー、セルリアンは、セルレアイト(チェルレ石)と重ねて、青空と少しの緑と紺色を混ぜたようなブルーです。
宝石の場合は、産地と個体差の影響から多少違いが生じますが、先人たちが宝石から色を表現し、それが私たちの時代まで繋がっていると思うと、感慨深いものがあります。私たちも、原点に戻って宝石の色を観察し、微妙な違いにこだわってみては楽しいのではないでしょうか。
もし、自分がこのアシスタントの立場だったら、青について話し合う場面でどう答えるでしょうか。何か、気の利いた答えがあれば、ようやく一人前になれるのでしょうね。
※ロビンス・エッグ・ブルー
伝統的産地であるイランのネイシャブール産の色を、西洋コマドリの卵の色に似ていることから呼ばれる。