「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」がジュエリーの様式とその歴史を解説。今回は、Art décoratifs(アール・デコ)様式のデザインについて、特徴などをご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2020年2月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
Art décoratifs(アール・デコ)様式のデザイン
1910年代~30年代にかけてフランスを中心に西欧諸国に開花した、直線と立体構成、幾何学模様の装飾性が特徴のデザインを「アール・デコ様式」と呼んでいます。
1925年、パリにて開催された万国博覧会が「L’ Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels Modernes」という名称で、アール・デコラティフの部分を取り、ここで紹介された装飾特徴をのちにアール・デコと呼ぶようになったのです。この万博の出品は文字通り、“現代の装飾性と工業に属するもの”と義務付けられていました。商業美術、建築、絵画、彫刻、工芸、ファッションなどの生活全般に及んでいることも特徴です。1925年がピーク時期だったことで、“1925年様式”ともいう場合もあります。
さて、ジュエリーに注目してみますと、遠く離れたインドマハラジャ宮廷文化や東洋の都市である上海、香港、東京にも影響が及んだことで生まれたジュエリーがあります。インド由来の色石の使用、中国の翡翠、珊瑚、オニキスなどを素材としてエスニック色豊かな組み合わせや、イタリア語で「すべての果物」を表すトゥッティ・フルッティと呼ばれる色石を使った花や果物のデザインの誕生、同時に、1925年前後のジュエラーたちのカタログでは、左右対称、ジオメトリックパターンがあり、安定供給されるようになったダイヤモンドと白い地金を使用するのがスタイルとして確立しました。どのタイプも大ぶりなお仕立てです。
この時代、頭角を現し始めたココ・シャネルはのちにこんな言葉を残しています。
「何カラットの宝石を身につけるのが問題ではなく、大切なのは洋服にいかにマッチしたジュエリーを身につけるかということ」だそうです。まさに現代のジュエリー装いの原点がこの時代なのでしょうね。