「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」がジュエリーの様式とその歴史を解説。今回は、BAUHAUS(バウハウス)的な思想について、特徴などをご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2020年4月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
GSTVにてジュエリーを紹介していると、人気が集中するスタイルがあります。それは、装飾を削ぎ落としたシンプルなデザイン。単純明快な機能美の前衛的デザインを考察したいと思います。
近代建築、コンテンポラリーアート、モダンな造形美は、一般によくBAUHAUS的思想が引き継がれていると言われますが、ジュエリーではムンシュタイナーが造り出す色石の表現のように、イーダーオーバーシュタインの職人たちやドイツデザイナーに非常に影響を与えていると感じます。
ではBAUHAUSとは何か。アーツアンドクラフツ運動で活躍していたヴァン・デ・ヴェルテ(※「アーツアンドクラフツ運動」参照)は、パリで住宅設計やインテリアを担当していましたが、ザクセン大公に招かれ1902年にワイマールに工芸ゼミナールを設立しました。その後、工芸学校に発展させ、その学校を初代校長となる建築家ヴァルター・グロピウスに委ねたことが建築学校「BAUHAUS」の始まりです。
この学校は、建築・舞台芸術・工芸など総合的な教育機関で、合理的な機能美、つまり簡潔な形や色を目指して技術と芸術の融合を理想としていました。この考えが根づき、今のシンプルジュエリーの好みに繋がっていると感じます。ちなみに日本の東京西洋美術館を建てたル・コルビュジエは、24歳の頃にグロピウスに会っていますから、きっと影響は受けているでしょうね。
最終的にこの学校は、ナチスの台頭で1933年に解散に追い込まれ、多くの教授陣は国外に亡命し終焉を迎えました。卒業生は約1200人。短い活動期間で、現代の世界の趣味嗜好にも影響を与えているとは驚きです。日本人の卒業生3人もその後の活動で日本に影響を与えたのでしょう。
現在は、当時の未完成で終わっていた作品をデジタルで復元するプロジェクトや実験的教育機関が立ち上がり、21世紀の新BAUHAUSを試みているそうです。
今回のテーマで私もジュエリーをセレクト。このメノウアートは簡潔な形と色がBAUHAUS的センスです。日中のオシャレにぜひ取り入れてくださいね。