12月の誕生石「タンザナイト」の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説についてご紹介します。
タンザナイトとは
タンザナイトの鉱物名は「ゾイサイト」。
目の覚めるようなブルーやバイオレットのオーロラを見せるタンザナイトは、人気があるのもよく分かります。ここ数年の需要は急上昇していて、カラーストーンの中ではサファイア以外の売上高を追い抜きました。ダイヤモンドの千倍は希少性が高く、鉱床の寿命もわずか十年程しか残っていないため、タンザナイトは今世紀人気の宝石です。
タンザナイトの特徴 | |
---|---|
原産地 | タンザニア |
色 | ライラック、ブルー、パープル、ファンシーカラー |
属性 | ゾイサイト |
硬度 | 6.00 - 7.00 |
屈折率 | 1.691 - 1.700 |
比重 | 3.35 |
その他 | 12月の誕生石 |
タンザナイトの伝説・歴史とは
1967年に発見されたタンザナイトにはまだ伝説の題材になるほどの歴史がありませんが、世界中で人気が高く話題を集めています。
タンザナイトの発見
タンザナイト以前に、スロベニアの貴族ゾイス・フォン・エーデルシュタインにちなんで名づけられたゾイサイト(タンザナイトの鉱物学上の名前)は、あまり有名になりませんでした。確かに、不透明なピンクやアップルグリーンの種類がジュエリーに使われましたが、ゾイサイトが大きな人気を博することはなかったのです。
「ゾイサイト」とは
これが変化したのは1967年、乾燥したキリマンジャロ山のふもと、タンザニアのメレラニでのことです。落雷から小さな野火が起きたことによってゾイサイトのワインのような紫の表面の小石が鮮やかなブルーになり、タンザニアに住むマサイ族の牧夫が発見した、という伝説があります。
このタンザナイト発見の物語は、タンザナイトそのものと同じくらいに本当に魅力的です。最初に発見したのが誰なのかはっきりとわかっていませんが、最も信用できる説明としては、キリマンジャロ山麓メレラニ丘陵を旅していて青い結晶を見つけたという、ンドゥグ・ジュマンネ・ンゴマの話でしょう。もうひとつは、地元民のアリ・ジュヤワツが、半透明のタンザナイトの結晶を見つけたという説です。そのとき居合わせたのがマヌエル・ドゥソウザという名の地元の探鉱者です。実は、ドゥソウザはその地域でルビーを探していて、当初新しいサファイアの鉱脈を見つけたのだと思いました。しかしその様々なブルーの色合いと複雑な化学組成から、宝石学者によってタンザナイトの正体が明らかになりました。
興味深いことに、伝説的なスコットランド人宝石学者キャンベル・R・ブリッジズは、1967年にティファニーのためにタンザナイトを調査していた際に、タンザニアでツァボライトを発見しました。米国宝石学会(GIA)研究機関(Gem Trade Laboratory)で 鑑定してもらうため、彼がタンザナイトをはじめてアメリカに持ち込んだのです。タンザナイトはニューヨークを拠点とする宝石店ティファニーに到着し、たちまちアメリカの宝石業界に広まりました。
名前の由来
ルイス・コンフォート・ティファニーの曾孫で、後にティファニー社の代表取締役社長になるヘンリー・B・プラットはすぐにその美しさに魅了されましたが、宝石学上の名称「ブルーゾイサイト」が気にかかりました。「ブルースーサイド(自殺)」と聞こえてしまうからです。そこで流行に倣った名前がつけられることになり、この珍しくエキゾチックなアフリカ産の宝石は「タンザナイト」という名前になりました。
公式に発表された1968年10月、プラットは「これまで2000年以上の間に発見された中で最も美しいブルーの宝石だった」と述べています。「20世紀の宝石」と謳われて、タンザナイトの青紫色の輝きはたちまち宝石界を席巻しました。
タンザナイトのジュエリーの需要は劇的に増加し、1998年と1999年にはタンザナイトは世界で最も売れているカラーストーンだと発表されました。今日、タンザナイトの需要は続き、サファイアを除いては他のカラーストーンの売り上げを上回っています。
人気が高じて12月の誕生石へ
人気を認められて、2002年にタンザナイトは宝石業界の公式誕生石リストに加わりました。これによってタンザナイトは、ターコイズとジルコンと共に12月の誕生石になったのです。1912年にリストが制定されてから変更されるのは初めてだったことを考えると、これは小さなことではありません。いまや正式に誕生石にもなって、タンザナイトは次第に新しい人生や新しい始まりを祝うのにふさわしい宝石として扱われるようになっています。
これはマサイ族の伝統に通じるものがあり、マサイ族では青が神聖な精神の色であり、出産した女性に青いビーズや服を贈ることになっているのです。現在ではこの伝統が発展し、マサイ族の首長は赤ちゃんが生まれたら妻にタンザナイトを贈っています。この贈り物は子供が健康で、積極的な成功する人生を生きるように祈るものだということになっています。
宝石界でも大流行
タンザナイトは現代の宝石界で大流行しています。かつてファッションブランド「グッチ」でモード界の異端児といわれたトム・フォードは、タンザナイトをはじめとするエキゾチックな青い宝石をモデルたちが身に纏ってキャットウォークを闊歩するコレクションを発表しました。
2004年のアカデミー賞授賞式では、主演男優賞を受賞したショーン・ペンの母で女優のアイリーン・ライアンが目の覚めるようなタンザナイトとダイヤモンドのクロス・ペンダントをつけていて、息子からスポットライトを奪っていました。
タンザナイトの特徴・特性とは
タンザナイトの魅力の大きな要因となっているのは、単なる澄んだ真夜中の空というよりも、もっと複雑な青い色をしているからですが、これは違った角度から見ると違った色がみえる多色性という性質によるものです。タンザナイトは極端に光に敏感で、日光の下では青っぽく見え、白熱光やキャンドルの下ではピンクがかったバイオレットに見えるという変化を見せることが多いのです。最高品質のものはどんな光の下でも濃いブルーですが、ほとんどの場合、両方の色を同時に見ることができます。
他色性(不純物着色)の宝石であるタンザナイトの色の彩度は、バナジウムの量で決まります。パステルカラーか、より濃い色か、どちらのタンザナイトを選ぶかはお好みと予算次第ですが、タンザナイトのカラフルな輝きは大きいサイズのほうが強くなるということにご注意ください。一般的には小さいサイズの宝石に濃い色が見つかることはないでしょう。
タンザナイトの内包物
タンザナイトの結晶にはかなりの場合インクルージョン(内包物)がほとんどないのが普通なので、標準レベルは「アイクリーン」になります。
「アイクリーン」とは
シェイプとカット
タンザナイトには様々なシェイプとカットがあります。オーバルとクッションが最も多いのですが、ラウンドやその他のシェイプも見られます。カットがどのようなものでもブリリアンスの強いものを探すと良いでしょう。濃いブルーは好まれますが、あまりに大きすぎたりカットがよくなかったりするとブリリアンスが失われ、暗すぎる色に見えてしまいます。
タンザナイトには極端に大きいサイズも出てくる場合がありますが、ジュエリーに人気のサイズは20カラット以下と言われています。
タンザナイトのすばらしい色、クラリティ、一連の想像力に富んだカッティングは人目を引く効果があり、ファッショナブルなドロップイヤリングや、ペンダントはタンザナイト本来の特徴を強調します。また、大きなカラット数のソリティアを高く持ち上げるようにリングにセッティングしたものは、きらめく色を最高に美しく見せてくれるので人気の的となっています。
希少性の理由
タンザナイトは世界で一ヶ所(タンザニアのメレラニ)でしか採掘されないので、その希少性も人気の理由です。
タンザナイトが形成されたのは5億8千5百万年前。何かのきっかけでバナジウムがランダムに入り込んだためですが、これは非常に珍しい現象で、タンザナイトが他の場所で形成される可能性は百万に一つだろうと考える専門家もいます。タンザナイトの鉱床はモザンビーク造山帯の変成岩、大理石、片岩にあり、キリマンジャロ山麓の暑い平原から登っていくメレラニの低い丘陵に広がっています。地表から41度の角度で鉱床ラインは一定間隔で湾曲し、タンザナイトの晶洞ができています。
かろうじて10数平方キロメートルのタンザナイト採掘エリアは、タンザニア政府によってAブロックからDブロックまで4つのブロックに分けられています。Dブロックは単に採掘される地域のことを指します。伝統的に、Dブロックで最高品質のものが大量に発見されてきたので「Dブロック」という用語が最高品質と同義語になったすのでが、良質のタンザナイトはどのブロックからも産出されます。
最も規模が大きく最新技術を使って操業しているCブロックでもタンザナイトの結晶原石の採掘量は平均で1トンあたりたった22カラット(4.4グラム)しかありません。タンザナイトの産出量はゆっくりではありますが確実に減少しているため、専門家の多くはタンザナイトがあと数年でなくなってしまうという意見です。当然ながら、このことによってタンザナイトはかなりの評判になっています。
色の濃さと等級制度について
タンザナイトにはいくつかの等級制度がありますが、どれも主に色のクォリティを判断するのに関わるシステムです。
ルビー、サファイア、エメラルドに比べると、一般的にタンザナイトはインクルージョンが入らないことが多く、そのため色が唯一最も重要な評価要素になります。タンザナイトの全採掘量の1%も満たないほどしかないトップクラスのタンザナイトは、深く濃いインディゴブルーが特徴です。
タンザナイトの原石は青みがかった赤ワイン色の結晶として産出されるため、実質的にタンザナイトはすべて色の質を高めるため加熱処理が施されています。これは一般に認められた永続的な処理で、タンザナイトの発色要素であるバナジウムをより安定させるものです。この処理により、非常に人気が高く希少性が高いファンシーカラー(ピンクタンザナイト、グリーンタンザナイト、バイカラータンザナイトなど)がまれに生まれることがあり、通常のタンザナイトの特質をすべて持ち合わせているこうした色のものはさらに珍しく、コレクターの人気も高いのです。
あらゆる年代に似合う宝石
タンザナイトからは洗練された雰囲気、個性、自信がにじみ出してきます。タンザナイトのジュエリーはあらゆる年代に似合い、若い人には縛られない精神を、年配の方には洗練を強調します。しかしタンザナイトは珍しく、刻一刻と希少性が高まっています。タンザナイトをもう所有していたり、唯一の鉱床がなくなる前に購入できた幸運な人は、20世紀の最も見事な宝石を所持する喜びを得るだけでなく、次世代へと引き継ぐ財産の管理人でもあるのです。
まとめ
「タンザナイト」の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説・歴史についてご紹介いたしました。
\もっと見たい方!/
GSTVでは、様々なタンザナイトのジュエリーを種類豊富にご用意しております。
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