宝石辞典

産地別で見る宝石「サファイア」をご紹介

1995年9月24日

産地別で「サファイア」をご紹介します。

 

オーストラリア産サファイア

世界でも最大級のサファイア鉱床の一部は、焦熱の国土オーストラリアにあります。最高品質のオーストラリア産サファイアは、カシミール、ビルマ(現ミャンマー)、スリランカ(セイロン)、マダガスカルといった他の産地の最高級品とは比べものになりませんが、それぞれに独特の魅力があります。

サファイアは100年以上もオーストラリアで採掘されていて、オーストラリア産サファイアの大部分は次の3つの地域から産出されています。

  • クイーンズランド中央部のアナキー地区
  • クイーンズランド北部のラバプレイン
  • ニューサウスウェールズ北東部インベレル周辺のニューイングランド地区

1980年代には、オーストラリアのサファイア産出量は全世界のおよそ70%を占め、生産量は減少していますが、国際市場におけるオーストラリア産サファイアは相変わらず高い人気を保っています。

オーストラリアでサファイアが採掘される地域は、タイ、カンボジア、マダガスカルの一部と地質条件がよく似ているので、石の性質もよく似ています。

スリランカ産サファイア

宝石の産地として有名なスリランカは、以前はセイロンと呼ばれていて、サファイアの採掘に関して最も古い記録が残っています。

サファイアはスリランカでは「ニルカタ」として知られているそうです。

スリランカは、古代からよく知られた良質のサファイア産地であり、ソロモン王はシバの女王にスリランカ産サファイアで求婚したと伝えられています。

スリランカ産サファイアが西洋のジュエリーに登場したのは、エトルリアが最初で、さらに紀元前480年頃からはギリシャ人とローマ人が使っていました。

「エトルリア」とは

エトルリアは、紀元前8世紀から紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群。

サファイア採鉱の最古の記録

スリランカでは、サファイアの採鉱はエラヘラとラトナプラの、茶樹が一面に植えられた斜面の下で発見された、宝石を多く含む堆積砂利層で行なわれています。2500年前まで遡りますが、ラトナプラにはサファイア採鉱の最古の記録が残っています。

ラトナプラはサンスクリット語で「宝石の街」という意味。

スリランカの首都コロンボから南東へおよそ100キロメートルの位置にあるラトナプラは、スリランカで発見された最も重要な宝石の堆積層です。ここではサファイアは砂利と砂の層、河床、湿地、野原、または丘のふもとに堆積した地層に埋まっているのが発見されます。沖積鉱床へは通常20〜30メートルの立坑で到達し、宝石を含む堆積砂利層は苦労して手作業で採取されるのです。

最高品質のサファイアを産出

スリランカ産非加熱コーンフラワーサファイア

ロイヤルブルーコーンフラワーブルーの色合いで有名なスリランカ産サファイアは、最高品質と同義語であり、非常に人気の高いものです。1981年、チャールズ皇太子がダイアナ妃に婚約指輪として、18カラットの素晴らしいスリランカ産サファイアのリングを贈り、スリランカ産サファイアの人気は急上昇しました。

タイ産カンチャナブリサファイア

静かなカンチャナブリ地方はクワイ川にかかる橋で有名で、タイ西部のジャングルに覆われた渓谷の中にあります。カンチャナブリのボー・プロイにあるサファイア鉱山は1918年に発見され、今でも世界最高級のブルーサファイアの産地です。

ボー・プロイのサファイアはアルカリ玄武岩からできた沖積鉱床から採掘され、わずか1カラットのサファイアの結晶を得るために、50トン以上もの堆積土を掘らなければなりません。ここ10年程の間にボー・プロイからの採掘が多過ぎたため、産出量が減りつつあります。そのため希少性が増しており、これらのサファイアはジュエリー・コレクターには必須のものとなっています。

マダガスカル産サファイア

古くからマダガスカルでもサファイアが産出されていましたが、1993年から1998年にアンドラノンダンボ地域とイラカカ地域の変成岩にサファイアが次々と発見されました。

現在では、世界で産出されるサファイアの約20%はマダガスカル産だと言われています。

マダガスカルのサファイアのほとんどは次の地域の豊かな鉱床から産出されています。

  • イララカ
  • アンドラノンダンボ
  • アンドレバベ
  • ディエゴ・スアレス

ナイジェリア産サファイア

ナイジェリアは特に人気の高い宝石の数々を世界に供給している重要な国で、ナイジェリア産サファイアは、カドゥナ州のニサマ・ジャマアで採掘されています。

カンボジア産サファイア

1875年にカンボジアのパイリン地域から同様のサファイアが産出されるようになりました。火山岩の一種である玄武岩起源であり、青色が濃すぎて美しさに欠けているため、加熱して淡くしなければジュエリーに使えないほどのものでした。

カンボジアにおけるサファイアにまつわる民話

カンボジアのパイリンという街には、この宝石にまつわる民話が残っています。

「パイリン」とは古代クメール語で「ブルーサファイア」の意味

昔、パイリン周辺の森の猟師たちが、山で隠遁生活を送るイエイ・ヤットという不思議な老女に出会いました。地元の野生動物を心配した彼女は「もし猟をやめれば、神がヤット山の小川や川からもっと高価なものを授けてくれるだろう」と猟師たちに話しました。

「イエイ」は古代クメール語で「おばあちゃん」の意味

猟師たちが山へ行ってみると、カワウソが小川で遊んでいました。するとカワウソがこちらへ泳いできて、口を開けると宝石がぎっしりとつまっていたのです。

古代クメール語で「カワウソ」は「ペイ」、「遊ぶ」は「レン」という意味で、こうしてこの場所とそのサファイアは「ペイ・レン」として知られるようになり、タイ語に訳されたときに「パイリン」になりました。今日でも、多くの人々が富を願ってイエイ・ヤットの聖地を拝みにやって来ます。

中国産シャンドンサファイア

中国は歴史的にはコランダムの鉱床があるとは考えられていませんでしたが、中国人は紀元319年もの太古からルビーやサファイアのことを知り、他の場所から手に入れようとしていました。

1970年代の後半になるまで、中国国内での発見の報告はありませんでした。

中国のサファイアの鉱床は国内の20以上の省に広く存在していて、それらのほとんどは東の海岸沿いにあります。オーストラリアで採鉱されているものと同じく、そのすべてでサファイアは玄武岩中に生成されています。こうした鉱床の中で、山東(シャンドン)省のものが最も上質です。山東省では小さなサファイア鉱山が20以上あって、200から300人の鉱夫が採掘していると言われています。

シャンドン産サファイアは、山東省昌楽県のウトゥ近郊で1980年代後半に、最初は砂鉱床で、後に玄武岩の母岩で見つかりました。二次鉱床である砂鉱床から採鉱され、一次鉱床からは鉱物標本の採取が行なわれました。

一般的に中国産ブルーサファイアは深い青色ですが、チャンタブリのバン・カー・チャや、オーストラリアのサファイアのように、グリーンがかったブルーやイエローも見られます。

中国産サファイアは、青というより黒に近く見える、墨を流したような非常に濃い色が特徴。シャンドン産サファイアは大変美しいロイヤルブルーでありながら、ほとんどのミッドナイトブルーサファイアよりも透明度がはるかに高いのが特徴です。

「ミッドナイトブルーサファイア」

ミッドナイトブルーサファイアは、マダガスカル、オーストラリア、ナイジェリア、タイ、ベトナム、中国など世界各国から採掘されます。

ミッドナイトブルーサファイアは、太陽が沈んだばかりで遠くに星が見えはじめた砂漠の空な色で、宝石にしては珍しく、鮮やかな紺碧色をしています。

タンザニア産サファイア

タンザニアのセレンゲッティ平原とインド洋との間を走るグレート・ノース・ロード沿いに、アフリカの心臓部への入り口、そして宝石鉱山で有名なウンバ渓谷があります。ウンバリバーサファイアは、この谷に沿って走る沖積鉱床から採取され、宝石の知識を代々伝えられてきたアルーシャやメルーの鉱夫によって、昔ながらの方法で採掘されています。

ウンバの他にも、タンザニア南部トゥンドゥル地域でも良質のサファイアが発見されています。

まとめ

産地別で「サファイア」をご紹介いたしました。

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