資産価値としてのジュエリー

「資産価値」としてのジュエリー【第11回】ブルーダイヤモンド

2023年10月31日

最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2023年11月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

ブルーダイヤモンドの逸話

宝石の頂点といっても過言ではない、まばゆく美しいダイヤモンド。そんな中でも「ホープ・ダイヤモンド」(現所蔵:アメリカ/スミソニアン博物館)と呼ばれる大粒ブルーダイヤモンドは、手に入れた者を不幸にすると言われ、ほの暗めな逸話を多数持つ魔性の石として有名です。しかし何故いわくつきの石なのに世界中の富豪がこの石を求めたのでしょうか?それはおそらく人々がその美しきブルーにどうしても魅入られてしまったからでしょう。

ダイヤモンドのカラー

 ダイヤモンドは一般的に無色で高い透明度を持つ石が高価値とされていますが、稀にイエローやピンク等、輝きだけでなく色も楽しめる素材も産出されます。これらは総称して「カラーダイヤモンド」と呼ばれ、高級な宝石として取り扱われる石が多数あります。そんなカラーダイヤモンドの中でも特に稀少かつ高価値なのが「天然ブルーダイヤモンド」。※ブルーダイヤモンドには「天然色」と「人為的に着色したトリートカラー」の2種類が存在しますが今回は前者のみを取り上げて話を進めていきましょう。

天然のブルーダイヤモンドの価値と性質

 天然色のブルーダイヤモンドの大半は【TypeⅡb】に分類される(一部例外あり)極々稀に産出される種類のダイヤモンドで、カラーダイヤモンドの中でも特に高価値で取引されています。通称Ⅱ型に分類されるダイヤモンドは窒素を含まず、Ⅰ型の「Dカラー」よりもさらに青白い地色であることから「Cカラー」と呼ばれることもあり、GSTVの番組内でも高い評価で紹介されている場面をご覧になった方も多いと思います。そんなⅡ型の中で「BORON=ホウ素」を含むとほんのり灰色味のあるブルーに色づく、これが天然のブルーダイヤモンドです。鑑別的な特徴も燐光(暗闇になってもしばらく自力で蛍光する)したり、電気を通す性質を持っていたりと、かなりユニークな素材でもあります。

ブルーダイヤモンドの資産性

 資産についてもレッドダイヤモンドと並び「宝石界随一」といって過言ではないほど高く、宝石コレクターのみならず資産家が財産として保有する機会が多いことでもよく知られています。「オークション会社勤務時代、リーマンショックに遭遇した際にほぼ全ての宝石価格が下落するなかで、天然のブルーダイヤモンドだけは価格が上昇していたその様を見て『これぞ最高峰の資産性を持つ宝石だ』と実感したことを今でも鮮明に覚えています。」(古屋さん談)

オークションにおけるブルーダイヤモンド

 もちろん近年のオークションでもブルーダイヤモンドは高額で取引されています。2013年、ロンドンで開催されたボナムズのオークションでは、5.3ctのファンシーディープブルーダイヤモンドの「トロンビーノ」リングが6,201,250ポンド(約9億4600万円)で落札されました。

ファンシーディープブルーダイヤモンドの「トロンビーノ」リング (2013年4月 ボトムズ)
出典:Bonhams | An important fancy deep-blue diamond 'Trombino' ring, circa 1965

また2016年5月、ジュネーブのクリスティーズオークションに出品された「オッペンハイマーブルーダイヤモンド」(14.62ct)の落札価格はなんと約5,750万ドル(約63億4,000万円)!

オッペンハイマーブルーダイヤモンドリング(2016年5月 クリスティーズ)
出典:Christie's | THE OPPENHEIMER BLUE A SENSATIONAL COLOURED DIAMOND RING

 博物館や海外オークションでないと見ることさえ難しい天然のブルーダイヤモンド。ただGSTVではそんな稀少品も紹介している機会があります!是非お見逃しなく。

\もっと見たい方!/

古屋 聡(ふるや さとし)

大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。

> 古屋 聡のプロフィール

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