石の買い付けからデザイン、製造販売まで一貫して行うGSTVだからこそご紹介できる高品質なジェムストーンの数々。スーパーバイヤーとともに数々の鉱山や海外マーケットに足を運んだ内藤秀治が解説するGSTVジェムストーン講座です。
今回はパパラチアサファイアをお送りします。
(番組ガイド誌2016年6月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
パパラチアサファイアとは
スリランカはジェムパラダイスとも呼ばれる宝石の宝庫です。中でもスリランカを代表する宝石の一つにパパラチアサファイアがあります。
水面に浮かぶ睡蓮の花(ロータスフラワー)の色にたとえられるピンクとオレンジの中間色を持つ美しい宝石です。
パパラチアサファイアの色
カラーストーンの場合、色で呼び方が変わるものがあります。サファイアはコランダムと呼ばれる鉱物で、赤以外の色を持つコランダムはすべてサファイアと呼ばれますが、赤い色を持つものはルビーと呼ばれます。
パパラチアサファイアはファンシーサファイアの中でも、最も高い評価が得られ、オレンジがかったピンク色のみがパパラチアと認められ、ピンクが強ければピンクサファイアでオレンジが強ければオレンジサファイアになってしまいます。
パパラチアサファイアの世界参考基準
パパラチアサファイアと認められるかは、国ごとにによって認識した色の範囲も異なり、ダイヤモンドのグレーディングのような統一された基準値がありません。
国ごとにそれぞれの参照する色のマスターストーンを持ち、鑑別機関ごとに判断基準も異なっているのが現状です。
LMHC(ラボ・マニュアル調整委員会)
このように国や機関によって判断基準が異なる石は多くあり、2003年に宝石鑑別レポートに使われる表記と基準に統一性を持つためにLMHCが組織されました。
LMHCとはLaboratory Manual Harmonization Committeeの頭文字をとったもので、日本、スイス、アメリカ、イタリア、タイなどの5か国から7つの機関の代表が集まった組織です。
この組織に日本代表として参加した人物が元全国宝石学協会の研究主幹、理学博士のDr. Ahmadjan Abduriyim (阿依アヒマディ) さんでした。
世界基準でパパラチアサファイアの色範囲を統一するために
アヒマディさんはパパラチア色基準の違いに大きな疑問を持っており、LMHCにおいて世界基準のパパラチアの色範囲の統一を提案し、LMHCのメンバーらとパパラチアサファイアの世界参考基準を設立しました。
パパラチアサファイアの色基準について
今回、パパラチアサファイアの色基準について、アヒマディさんから直接説明を受けることができました。
色の判定は、現物の石を二次元のカラーチャートとマスターストーンと比較しながら、石の色相、明度や彩度を決定し、パパラチアの色範囲に相応しいかどうかを判断していきます。LMHCでは、世界中のラボから50個の石を集めプロットし、ピンクからオレンジへの色調のサンプルと濃いから淡いトーンの変化をつけた10ピースのカラーマスターストーンを選別し、基準としました。そして石を見るためのライトの色温度を5000K〜5500K(ケルビン)に設定、フェイスアップでの確認と水平から30度の角度変化まででの確認、色帯の度合いまでサンプルを作り細かく決めました。
この10個の石をマスターカラーとして日本の企業に色が安定した合成石のマスターカラーサンプルの作成を依頼しました。現在LMHCやほかの国のラボや宝飾企業などがこの基準を参照していますが、日本の鑑別機関では以前からのサンプルを使っている所が多いようです。
各国のパパラチアサファイアの色範囲について
各国の鑑別機関のルースを見る機会がありますが、ヨーロッパではオレンジが強く、日本では淡いピンクが多いかなと感じます。そういえば、ドイツではパパラチアサファイアは夕焼けの色とも呼ばれています。
産地でいえば圧倒的にスリランカが多いのですが、マダガスカルのイラカカでもオレンジを含むピンクサファイアが2001年に発見されています。産出量は多くないのですがタンザニアのソンギアでもオレンジの強いサファイアが見つかっており、基準値に入ればパパラチアサファイアになります。
日本では非常に人気も高く高価な宝石ですが、一部にはマダガスカルのピンクサファイアとベリリウムを一緒に加熱することによってイエローを引き出しパパラチアカラ―に見せる処理石もあるので注意が必要です。
まとめ
長年、カラーストーンと向き合っていますが、本当に奥が深いと実感しました。GSTVでは、世界基準の色範囲をしっかりと認識し、皆様に魅惑的なロータスカラーをご案内してまいります。
\もっと見たい方!/
GSTVでは、様々なパパラチアサファイアのジュエリーを種類豊富にご用意しております。
阿依 アヒマディ(あい あひまでぃ)
Tokyo Gem Science社の代表兼GSTV宝石学研究所の所長。
理学博士・FGA。国際鉱物学会(IMA)宝石素材委員会日本代表。国際宝石学会理事。京都大学理学博士号取得後、全国宝石学協会 研究主幹を務め、2012年にGIA Tokyoラボを立ち上げる。現在はTokyo Gem Science社の代表およびGSTV宝石学研究所の所長として、宝石における研究、教育セミナー、宝石鑑別などの技術サポートを行っている。宝石の研究、鑑別に関して日本を代表する宝石学者。