石の買い付けからデザイン、製造販売まで一貫して行うGSTVだからこそご紹介できる高品質なジェムストーンの数々。スーパーバイヤーとともに数々の鉱山や海外マーケットに足を運んだ内藤秀治が解説するGSTVジェムストーン講座です。
今回はインドの仕入れをお送りします。
(番組ガイド誌2016年2・3月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
目次
世界一のダイヤモンドの取引量「インド」
インドはダイヤモンドの取引量では世界一です。世界の色々な産地から集まってくるダイヤモンドの原石をカットして取引されています。ダイヤモンドはダイヤモンドトレーディングセンター(DTC)で原石が取引され、「サイトホルダー」と言われる原石を買う資格のある会社のみ買うことが出来ます。
ダイヤモンドの研磨の歴史
ダイヤモンド研磨の歴史は古く14世紀にはカッティングされていましたが、その頃はダイヤモンドの原石の面を光らせるくらいしかできず、原石の形のままのダイヤモンドでした。16世紀初頭にはダイヤモンド研磨ツールも生まれ、ローズカットと呼ばれるカットが新たなダイヤのカットとして加わりました。ダイヤモンドの貿易のほとんどは、インドで行われ、19世紀に南アフリカの鉱山が発見されるまで続きました。
もともとインドでは、ダイヤモンドの原石が取れたために研磨技術も発展していきました。様々な歴史の中でダイヤモンドの研磨はイスラエルのテルアビブ、ベルギーのアントワープ、インドのムンバイと言う3都市が代表的な研磨地になり、同時にダイヤモンドマーケットとしての機能も合わせもっています。
ダイヤモンドの研磨と技術
近年では、イスラエルでは大粒で高品質のダイヤがメインで取り扱われ、インドではイスラエルではカットしないすべてのサイズ、すべての品質の原石の研磨をしています。理由は歴史的に古くからダイヤモンド貿易が行われてきたことと、それ以上に工賃が他の国より安く抑えられるからです。
ダイヤモンドの研磨はサイズが小さければ小さいほど工賃比率が高くなってしまうので、特に−2(マイナスツー)と呼んでいるもっとも小さなラウンド、直径が1mmで0.005ctというサイズにしっかりと58面体の研磨を施すことができるのは、(それよりも小さいサイズも存在します)人件費が安く技術があるインドの他にはないのです。
巨大なダイヤモンドマーケット
以前はムンバイのオペラハウスというエリアにダイヤモンドマーケットがありました。
以前からマーケットの移転の話はありましたが、なかなか進まず移転計画から19年の歳月をかけようやく2010年に税関の移動をきっかけに新しいエリア、Bandra Kurla Complex BHARAT DIAMOND BOURSE(BDB-BKC)に移動しました。20エーカーの敷地に200万平方の建物、そこに約2500社のオフィスが集まっています。銀行、トレーディングルーム、セーフティーボックス、通関施設、金融、為替、輸出などの業務がすべて敷地内で終わらせることができ、以前に比べセキュリティーも強化されています。
さあこの巨大な施設でどうやってダイヤモンドを仕入れるのか。
買い方は色々あるのですが私は事前に何軒かの業者に連絡を入れほしい物を伝えておきます。何件かに分けることによって値段や品質の比較ができること、旬の情報を聞き出すことが出来るので自分の足で動くことが大切です。目的や仕入れるものによっては一軒の事務所に腰を据えて何人もの業者を呼ぶ方法もあります。検品に時間のかかる石や大量にアソートが必要な時は移動が少ない方が効率が良いですね。後は値段交渉です。
これは「ファイト」と言ってきつい言い争いになる場合もある、業者が売りたい値段と我々が買いたい値段が近ければ歩み寄るのですが、売りたい値段がはるかに高い場合は買えないことも多々あります。
そしてダイヤモンドの仕入れで大切なこと
これが重要です。
インドの仕入れも変わる、以前の買い付け方法
インドの仕入れもだいぶ変わってきました。古い買い付け方法は、通常1軒の事務所を使って買い付けることがほとんどでした。もちろん目的によって買い方や探し方は変わってくるのですが、事務所のオーナーがブローカーを使いバイヤーの要求する石を探し、ブローカーがその事務所に石を持ってくる。そこでバイヤーが石のロットの状況を確認して値段交渉をする。という買い方です。
この買い方は以前はよく行われていました。また私も最初の頃は仕組みがわからず、事務所のオーナーの言うことを信じ値段交渉をしていれば安く買ったという気になっていたのです。考えればわかることですが、石のオーナーはもちろんブローカーも事務所のオーナーもコミッション(利益)を取っているのです。石のオーナーから直接買えばブローカーと事務所のオーナーのコミッションを払う必要がないのです。
石のオーナーは様々ある
しかし石のオーナーと言っても様々なのが問題です。
- サイトホルダーのようにDTC(ダイヤモンド貿易会社)から原石を購入しカットしている会社
- サイトホルダーから得意分野の原石を買い自社で研磨工場を持っている会社
- 研磨工場から上がってきたカット石をすべて買い取っている会社
- マーケットにある研磨済みの石を買い取っている会社
原石を研磨している人だけがオーナーではなく対価を支払い在庫を持っていれば、石のオーナーなのです。サイトホルダーより安く購入することが出来るのは、現金を欲しがっているオーナーが相場よりも安く売る場合があるからです。ある意味ではサイトホルダーが一番相場に近い値段なので安くもなく、高くもなく普通の値段です。
それぞれ得意分野の会社から買うことが一番
ただし、そんなに単純でもないのがダイヤモンドのマーケットです。先に書いた『得意分野』が大きな意味を持ちます。サイトホルダーは割当で購入した原石の中でも自分の工場で研磨する原石と、原石のまま売ってしまう原石に分けますが、ここからまた複雑になっていきます。
原石には色々な種類があるということです。
- 良質で白で大きい
- 良質で白で中間
- 良質で白で小さい
- 良質で黄色味があり大きい…
- 良質で茶色身があり大きい…
- 中間質で白で…
- 質が悪く白で…
- 質が悪く茶色で…
それぞれの質と大きさと色と原石の形状で最終的に研磨される石も変わってきます。すべてがラウンドになるわけではなくペアシェイプやマーキスなどのファンシーシェイプにカットされる原石があったり、DTC(ダイヤモンド貿易会社)以外のロシアやカナダやオーストラリアの原石であったり、原石の種類も多いのです。その価格は、質や量や時期やサイトホルダーの経済状況によって大きく変わるのです。
そして研磨工場を持っている会社は得意分野の原石を買い続けることによって、より一層得意分野に特化していくのです。ブラウンの大きいラウンドで質の良い石を得意としている会社であっても、ブラウンの小粒が安いとは限らないのです。
ダイヤをより安く買うためには必要としている石の得意分野の会社から買うのが一番安く買える方法です。そしてその会社といい関係を築くのが重要になります。
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