「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」がジュエリーの様式とその歴史を解説。今回は、ファベルジェスタイル「エナメルと宝石の調和」についてご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2020年10月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
金細工師カール・ファベルジェ
歴史に残る画家や彫刻家は沢山いますが、歴史に残る金細工師が注目されないのは残念なことです。ロシア皇帝ニコライ2世に溺愛された金細工師カール・ファベルジェは、究極な技法や仕掛けを編み出し、名を残した一人と言えるでしょう。彼の生い立ちと共に、どんな作品なのか掘り起こしてみましょう。
1846年に、ロシア、サンクトペテルブルクにて金細工師の息子として生まれ、ドイツやフランスで修行後、24歳で父親の工房のジュエリーアーティストの仕事をスタートしました。
ファベルジェの工房は、国籍の異なる500人にものぼるアーティスト達を抱え、あらゆる種類のジュエリーや彫刻、時計、皿、ボックスという広範囲な作品を製造していました。ファベルジェのイースターエッグや仕掛け時計でご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ファベルジェの作品
作品の特徴は、洗練されたフォームと色と形の絶妙な組み合わせです。そして、114種類ものエナメルの色彩を完成させています。彼の豊かな想像力はもちろん、素材を限定しない発想、過去から現在までの様式に精通した知識量の多さが強みでした。ファベルジェの作品はフランス嗜好がメインですが、東方の芸術の影響も受けています。特に動物の像は、日本的な雰囲気も入り、様式は広範囲です。彼は、自身の手で作る訳ではなく、センス溢れるディレクターだったようです。
彼の両親は元々フランスにいたユグノー※でした。ユグノーには数学や天文学に優れた知識人が多く、スイスが時計作りで有名なのは、ユグノーがスイスに亡命したからだと、私が学生時代お世話になった故市川慎一教授はよく話してくれました。実際、ロシア革命で、ファベルジェ一家もスイスにいる知人を頼って亡命していますし、今も残る高度な仕掛け装置は、知識と技術あってこそです。
※ユグノーとは…
フランスのカトリック対立していたカルヴァン派プロテスタントの人々。1562年から36年に及ぶユグノー戦争の中、弾圧から逃れるために、スイス、ロシア、イギリス、ネーデルランド等へと亡命する者が出た。
エナメルと色石の組み合わせ
さて、今回GSTVの商品の中から、エナメルと色石の組み合わせで精巧な作りのブローチを発見。ロシアの貴婦人を気取ってみましたが、見栄えやいかに・・・。