資産価値としてのジュエリー

「資産価値」としてのジュエリー【第6回】ヒスイ(翡翠)

最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2023年1月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

ジェイダイトとネフライト

 ロシアでは紀元前三千年、中国では紀元前五千年と、宝飾品などとして太古から愛されてきた緑色の美しい石「ジェード」。「玉」という漢字でも表現されるジェードは「ジェイダイト(硬玉)」と「ネフライト(軟玉)」に大別されます。いずれも割れにくい=靭性が強いことが最大の特徴で、近似した外観・性質を持っていますが19世紀に別の石であると確認されました。

歴史を持つヒスイ

 透明度が高く希少価値の高いジェイダイト(硬玉)が、日本で「ヒスイ(翡翠)」と呼ばれる宝石。縄文時代から勾玉などに加工され、装飾品とお守りの2つの意味を併せ持つジュエリーとして愛されてきました。特に新潟県・糸魚川のヒスイは約6000年前の遺跡からも発掘されることから、その文化含め世界最古と考えられています。そんな歴史的背景、日本が希少な産地であることなどをふまえ、2016年にヒスイは国石に選出されました。
 日本以外にも中国などのアジア圏では昔からヒスイが珍重されてきたので、ダイヤモンドやエメラルドなど近代になって輸入されてきた宝石とは別格の立場として扱われてきた歴史を持つ、資産価値が高い石といえるでしょう。

ヒスイの価値を決めるものとは

 ヒスイの価値を決めるのは色と透明度、そして形です。ラベンダーやレッドなど、様々な色味を持つヒスイですが、その中でも半透明で深く澄んだ緑色は希少性が高く「琅玕(ろうかん)」と称され高い価値で取引されます。中国では「氷翡翠」と呼ばれる無色透明のヒスイも人気があり高価値で流通しています。さらに欧米では「ラベンダーヒスイ」と呼ばれる紫色のヒスイも人気です。
 産地としては18世紀に採掘が開始されたミャンマー・カチン州の素材が品質色ともに最高級とされています。また、古来からの産出地である日本・糸魚川産も現在採掘ができない状況のため大変希少で高価値です。
 余談ですが、中華圏の国々ではジェードのひとつとされているネフライトもとても人気が高く、特にホワイトネフライト(羊脂玉)はかつて皇帝に献上されたことで、ヒスイよりも高い評価で取引されることがあります。

オークションにおけるヒスイ

 このように世界的に有名なヒスイは高額オークションにもよく出品されています。例えば2014年、香港・サザビーズでは世界的なジュエリー・コレクターのひとりとして知られたバーバラ・ハットンが所有していた大振りのヒスイネックレス「ハットン・ムディヴァーニ・ジェイド・ネックレス」が約29億円で落札されました。オークションでは、華やかなデザインのジュエリーよりも、珠そのものを楽しめるビーズネックレスが人気のようです。

ハットン・ムディヴァーニ・ジェイド・ネックレス(2014年4月 サザビーズ)
出典:Sotheby's | jadeite, ruby, diamond, Beads approximately 19.20 to 15.40mm.
https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2014/magnificent-jewels-jadeite-hk0518/lot.1847.html
カルティエによるジェダイト、ルビー、ダイヤモンドのネックレスとブレスレット(2021年11月28日 クリスティーズ)
出典:CHRISTIE'S | IMPORTANT JADEITE, RUBY AND DIAMOND NECKLACE, BY CARTIER; AND A JADEITE, RUBY AND DIAMOND BRACELET, MOUNTED BY CARTIER
https://www.christies.com/lot/lot-6345727?ldp_breadcrumb=back&intObjectID=6345727&from=salessummary&lid=1

 装飾品としてだけでなくお守りとして古来より珍重されてきたヒスイ。GSTVでも多種多様のヒスイジュエリーを取り扱っていますので1月のお買い物にぜひご一考ください。

古屋 聡(ふるや さとし)

大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。

> 古屋 聡のプロフィール

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