イーダー通信

アトリエ・トム・ムンシュタイナー25周年記念【イーダー通信】

2022年11月30日

 2年10か月ぶりの訪問が叶い、本誌8月号でご紹介したアトリエ・ムンシュタイナー。実は今年2022年は、父ベルント・ムンシュタイナー氏からトム・ムンシュタイナー氏が工房を引き継いで25周年という節目の年です。アトリエで盛大に開催されたレセプションと個展の最新情報を入手しましたので、ご紹介いたします。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年12月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

25周年記念レセプション

インヴィテーションレター
25周年にふさわしい展示品であり、一際存在感のあるオブジェ。2019年作。

 2022年である今年は、ムンシュタイナー工房にとって、そしてムンシュタイナーファミリーにとって非常に重要な1年でした。それは、父ベルント・ムンシュタイナー氏からトム・ムンシュタイナー氏がアトリエを引き継いで25年の節目の年であるからです。私たちは普段「ムンシュタイナー工房」と呼んでいます。トム氏が当主ではありますが、ベルント氏が設立した当初から思想、哲学は一貫しており、継続性のある工房であるからです。ただし、厳密には「Atelier Tom Munsteiner」。そこには、当主はトム氏であるという明確なメッセージがあり、経営能力にとどまらず、責任も統率力もそして何より新しい発想を形にする力が求められるからだと私は思っています。

 今回訪れることはできませんでしたが、5月の再会時に25周年記念レセプションの話を聞いた時から、私は本コーナーで読者の皆様に紹介したいと考えていました。レセプションが終わった後、トム氏にそのことを伝えてインタビューすると、とても喜んで話してくれました。

「私たちの25周年記念を記事として取り上げていただき、とても素晴らしく思います。なぜなら、今回は過去のどれよりも素晴らしい展示会だったと思うからです。著名なジュエリーブロガーであるカタリーナ・ペレス氏の言葉で開会し、共に作品を紹介する芸術家たちの作品、そして、私たちの今日に至る25年間で製作した数々のジュエリー作品をご覧いただくことができました。これはとても光栄なことです。モデルによるショーや、バイオリンとチェロによるミニコンサート、地元醸造所のワインの試飲も行われました。移動の不自由さが残る昨今でありながら、ドイツ国内外から200名を超える方々が訪問してくださいました。」

レセプションの様子①
レセプションの様子②

隔年で続けてきた展示会「Atelier Exhibition」

 2年に1度、いつも秋にアトリエで開催されてきた展示会Atelier Exhibition(以下、「アトリエ展」)。1997年から1回をのぞき隔年で開催されてきたアトリエ展は、今回で13回目。9月30日に25周年記念レセプションを行い、その後10月9日までの10日間にわたり開催されました。アトリエ展は、展示会というより様々な芸術作品の「個展の集合体」という表現の方が個人的にはぴったり合う感じがしています。それは、巨大で無機質な見本市会場ではなく、普段美しい宝石や芸術作品が生み出される職人の息遣いが聞こえるような温かい空間で開催されるものだからかもしれません。

 期間中は、ムンシュタイナー氏の作品に加えて、他の分野の芸術家の作品も展示されるのが特徴的です。絵画、プラスチック、陶器など様々な芸術作品を紹介するのは、来場される方々に幅広い芸術を味わっていただきたいという願いからだそうです。今回も、ベルント氏、トム氏、ユッタ氏に加えて、ヴィヴィエン・グランドュイラー氏、マクシミリアン・レッフラー氏、シュテファニー・ルッチェッタ氏の作品が展示されました。余談ですが、アトリエ展には多くの著名人が訪れます。政治家や省庁の大臣、経済界の人たちも来場されます。過去にはアップルの元CEOマイケル・スコット氏もゲストとして来てくれたことがあるそうです。

 今回のアトリエ展、いつも以上に素晴らしい空間での貴重な時間だったことでしょう。彼が言った「このアトリエは私の人生のすべてです」という言葉がとても印象的です。彫刻家として芸術家として、強い覚悟と熱い想いがそこにあるのです。

2022年5月にギネス世界記録に登録されたパライバトルマリンのネックレス
地元新聞の記事

 

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三沢 一章(みさわ かずあき)

長年に渡りドイツジュエリーを研究。イーダーオーバーシュタインの宝石を日本に紹介すると同時にストーンカメオの研究家でもある。

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