世界三大美術館は展示作品もさることながら、建物自体も豪華絢爛で歩いているだけで心躍る時間を過ごすことができた。
なかでも、通常展示のほかにガイドツアーの形式で回ったダイヤモンドルームは皇后の所有していた大小様々な宝石が展示されており、宝石でできた花束などは圧巻のひとことだった。
美術館から次の目的地まではバスを使う予定だったが、先ほどの美術品に思いを馳せながら歩いていくことにした。8月にもかかわらず心地よい風が吹きジャケットを羽織っていて丁度よく散歩をするにはもってこいの陽気だ。
印象に残った作品を頭に思い描きながら歩いていると、ダイヤモンドルームの中で妻から聞いていた宝石を見ていないような気がした。
ロシアで採れていたという光に当てると色が変わる石。皇帝に献上されたともされるそれがなかったというのはおかしな話なので、私が見落としてしまったのかもしれない。
思い出してしまったがゆえに探究心が騒ぎだし、美術館へ後ろ髪を引かれながら大聖堂を目指すことになってしまった。
そもそもその宝石の名前はなんだっただろうか。