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ストーンカメオ講座

宝石の街 イーダー・オーバーシュタイン【ストーンカメオ講座】

2019年8月1日

約500年にわたり宝石研磨、宝石彫刻技術が脈々と受け継がれている稀有な街がドイツにあります。この番組では「イーダー」としてお馴染みのイーダー・オーバーシュタイン市です。今回は、宝石の集積地として、またカメオを含めた宝石彫刻の中心地として、世界中に宝石文化を発信し続けるこの街をご紹介いたします。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」 2019年8月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

宝石の街 イーダー・オーバーシュタインとは

イーダー・オーバーシュタインは、ドイツの中心都市のひとつフランクフルトから南西に約130キロにある、人口は3万人弱の緑豊かな小さな街です。

ドイツ語で「石の上の町」を意味し、ナーエ川の谷あいに位置しています。フランクフルトからは車、電車ともに1時間半ほどの距離にありますが、イーダー・オーバーシュタインに近づくにつれて、なだらかな丘陵からごつごつとした岩肌に車窓が変わっていくことが印象的です。

岩窟にあるフェルゼン教会は街のシンボル

この街は15世紀半ばにメノウ鉱山が発見されたことから宝石研磨技術が発展し、以降宝石産業の集積地として発展してきました。

当時は、水車を用い河川の水力を宝石研磨の動力として活用していたため、ナーエ川とその支流に沿って数多くの水車小屋があり、各所で石の研磨がなされていました。大きな研磨機に向かい横たわるような姿勢で研磨していたと言われ、重労働であったことが推察できます。

岩窟にあるフェルゼン教会は街のシンボル
水車小屋での研磨の様子

1870年に採掘が中止されてからも世界中から原石が集まる宝石の街として知られ、現在でも住民の70%が何らかの形で宝石産業に関わっていると言われています。

のどかで静かな街ですが、老舗の宝石業者がひしめき、著名な宝石彫刻家が世界に向けて情報を発信し続けるユニークな街です。

ドイツ宝石博物館

ドイツ宝石博物館の外観

ドイツ宝石博物館は街の中心部に位置し、1894年に個人の邸宅として建設された重厚感漂う建物にあります。

世界中から集めた約1万点の宝石コレクションが展示されていますが、この博物館の大きな特徴は、イーダー・オーバーシュタインの彫刻家による数々の素晴らしい宝石彫刻の展示です。

これまで当コーナーでご紹介したカメオ彫刻家や宝石彫刻家の作品も数多く展示されています。

その中でも、「現代カメオの父」と呼ばれイーダー・オーバーシュタインのカメオ彫刻の礎を築いたアウグスト・ヴィルト氏(1891〜1956)が1937年にパリ万博でグランプリを受賞したカメオと、リチャード・ハーン氏(1917〜1999)の遺作となったカメオは必見です。

もちろん、光の魔術師と呼ばれる宝石彫刻家ベルント・ムンシュタイナー氏の作品も展示されています。

特別展「聖ヒルデガルト・フォン・ビンゲン展」

 ドイツ宝石博物館では、地下の展示室で様々な特別展が開催されています。私が先日訪れた際は、Hildegard Von Bingn(聖ヒルデガルト・フォン・ビンゲン展)が10月末までの予定で開催されていました。

中世、修道院長であり預言者であった彼女の生涯を主軸に、当時の人々にとって宝石が装飾品としてだけでなく、お守りや治癒の道具として神秘的な役割を果たしていたことが説明されていました。

展示室の中心には一際目をひくオブジェが展示されています。大きな縞メノウ原石にうつむいている女性が彫刻されています。

実はこの作品、彫刻家エルヴィン・パウリー氏がこの特別展のために製作したカメオなのです。天然の素材を最大限に引き出した個性的な作品を楽しむことができました。

ドイツ観光といえば、ロマンティック街道や古城街道が有名ですが、イーダー・オーバーシュタイン周辺は宝石街道(Edelstein Strasse)と呼ばれ、宝石好きカメオ好きにはぜひ訪れていただきたい場所のひとつです。

名物料理スピースプラーテン(玉ねぎと特製スパイスに漬け込んだステーキ)

三沢 一章(みさわ かずあき)

長年に渡りドイツジュエリーを研究。イーダーオーバーシュタインの宝石を日本に紹介すると同時にストーンカメオの研究家でもある。

> 三沢 一章のプロフィール・Q&A

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