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資産価値としてのジュエリー

「資産価値」としてのジュエリー【第14回】ピンクダイヤモンド

2024年6月29日

最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2024年7月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

ピンクダイヤモンドの世界

 宝石で最も知名度が高く、その美しいきらめきが人々を魅了してやまないダイヤモンド。
その中でも甘く優しい色合いに鮮烈な輝きが魅力のピンクダイヤモンドを今回はご紹介します。

ピンクダイヤモンドの色

 一般的にダイヤモンドは無色透明が最も価値が高いとされますが、ピンクダイヤモンドは産出量が特に少なく高価値で取引されるファンシーカラーダイヤモンド。
色の鮮やかさにより「ファンシーライト」、「ファンシー」、「ファンシーインテンス」、「ファンシービビッド」、「ファンシーディープ」などの評価に分類され、窒素を含むⅠ型と含まないⅡ型の両者共に、色が濃く鮮やかなピンクを発色するほど評価は高くなります。

ちなみにピンクダイヤモンドの色起源は塑性変形といわれる構造の歪みによるもの。
イエローダイヤモンドの窒素やブルーダイヤモンドのホウ素など、特定の微量元素による色でない点も神秘的な魅力を感じてしまう一因なのだと思います。

ピンクダイヤモンドの産地

 インドやブラジルからは古くからピンクダイヤモンドがごく少量ながら産出していましたが、1979年、オーストラリアにてアーガイル鉱山が発見されたことで、市場におけるピンクダイヤの存在は大きく変化します。
ブラウンカラーや工業用ダイヤモンドなど品質としてはあまり高くないダイヤモンドが産出されていた同鉱山で、紫色を帯び色が濃いⅠ型のピンクダイヤモンドが産出されるようになり、アーガイル鉱山はピンクダイヤモンドの産地として世界的に名を馳せるように。

世界中の多くのダイヤモンドはキンバーライトという鉱物と一緒に地球深くのマントル層から地上にやってきますが、オーストラリアで採掘されるピンクダイヤモンドはランプロアイトという他鉱山ではみられない珍しい母岩中に存在しているのも特徴的。
絶頂期には世界で供給されるピンクダイヤモンドのおよそ90パーセントを産出していましたが2020年11月に採掘を中止して以降は、希少性の高まりから価格が一気に上昇しました。

ピンクダイヤモンドの価値

 南アフリカを中心に稀少ながら「さくら色」の上品なピンクカラーが魅力的なⅡ型のピンクダイヤモンドと共に、一般のジュエリー愛好家以外の投資を目的とした売買も行われていて、ピンクダイヤモンドの資産価値は今なお上昇している最中です。

ピンクダイヤモンドの産出量は、2010年頃から減少の傾向が見られていましたが、それより以前の1998年、ニューヨーク・クリスティーズのオークションにて3. 20ctのカイトカットのファンシービビッドピンクダイヤモンドがUS$1,189,500(当時の価格で約1億5000万円ほど)、13.09ctのラウンドカットのルースがUS$667,550(約8600万円ほど)で落札されており、当時から高価値だったことがうかがえます。

オークションにおけるピンクダイヤモンド


 2017年4月のサザビーズ香港では59.60ct、内包物がなく、透明度が高くて色合いは最高品質のファンシー・ビビッドのピンクダイヤモンド、シュタインメッツ・ピンクダイヤモンド「ピンクスター」が7120万ドル(約83億9800万円)で落札されました。ワシントンD.Cのスミソニアン博物館で開催された『世界で最も希少なダイヤモンド』として展示されています。

▲59.60ctのシュタインメッツ・ピンクダイヤモンド「ピンクスター」 (sothebys.com)
出典: Sotheby's | The oval mixed cut fancy vivid pink diamond weighing 59.60 carats, mounted as a ring, size 51.


 直近の2022年10月、香港のサザビーズで開催されたオークションでは、11.15ctの「ウィリアムソン・ピンクスター」が4億5320万香港ドル(約84億円)で落札されました。

こちらのピンクダイヤモンドは、1940年にカナダの地質学者であるジョン・ウィリアムソン博士によって発見されたタンザニアのシンヤンガの北東に位置するダイヤモンド鉱山であるウィリアムソンダイヤモンド鉱山で発見されたダイヤモンドです。

完璧な透明度を備えた10ct以上のダイヤモンドはオークションの宝石史上2番目の落札価格(1ctあたりの価格としては過去最高額! )と高い評価を受けました。

▲11.15ctの「ウィリアムソン・ピンクスター」 (sothebys.com)
出典: Sotheby's | The Williamson Pink Star

  いつまでも眺めていたくなるピンクダイヤモンドのジュエリー。永遠の絆という意味を持ち幸せを呼ぶとも言われています。GSTVでは日常使いにぴったりなジュエリーから、ハレの日の装いに合わせたいジュエリーまで、様々な種類のジュエリーを取り揃えております。是非この機会にご覧ください。

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古屋 聡(ふるや さとし)

大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。

> 古屋 聡のプロフィール

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