最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年11月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
新誕生石「スピネル」
昨年、新誕生石のひとつとして選出されたスピネル。イギリスの王家に伝わる352カラットの伝説の「ティモールルビー」や170カラットの「黒太子のルビー」が実はスピネルだったことは有名な逸話です。
わかりやすく説明すると「スピネルはルビーやサファイアの親戚」といった存在で、同一の鉱床から産出されることもあります。組成や構造も近似していることからパッと見た目で判別することは難しいケースも多いですね。
スピネルの特徴
スピネルの特徴としては「澄んだ輝きと個性の強い色合い」があげられます。美しい正八面体の形状をした原石をただ研磨しただけ、つまり非加熱であることが多いため輝きを阻害する内包物が少なく、独特な澄んだ輝きを放ちます。また他宝石と比較しても複雑で深みのある個性的な色を持っているので「私だけの色」を探している方には最適の宝石です。実際に買付けの最前線では多くのバイヤーがスピネルの虜になってしまいます。
特に価値が高いのはレッドスピネル
レッド、ピンク、ブルー、バイオレットなど、色味豊富なスピネルですが、特に価値が高いのはレッドスピネル。古くから採掘されているミャンマー/モゴック産のレッドスピネルは高価値とされています。また番組で「アヤナスピネル」と紹介しているタンザニア/マヘンゲ産のスピネルは鮮烈なホットピンクの色が美しく、こちらも高い価格で取引されています。青色系としてはベトナムから産出されるコバルトブルーのスピネルが有名。とても稀少でコレクター垂涎のアイテムとなっています。スリランカ産は輝きが特に強い素材が多く、スター効果、キャッツアイなど、珍しい色や効果を有した石も産出されています。ピンクスピネルでいえば中央アジアのタジキスタン周辺で採れる「バラススピネル」も今後注目されるかもしれません。
これまでは欧米向けの高級宝石でしたが近年ではアジアや中東圏での人気が急上昇しているため今後さらに資産価値が上がることが見込まれます。
オークションにおけるスピネル
2015年、ボンハムズのオークションに「ホープ・ダイヤモンド」の所有者として有名だったヘンリー・ホープ氏のコレクションのひとつ「ホープ・スピネル」が登場し、約1億7000万円で落札されました。
1997年10月、ロンドンのクリスティーズオークションで、インド独立50周年を記念して「名高いインディアンジュエリー」をテーマにとした競売を開催。そこに出品されたスピネルネックレス(ムガール帝国の3皇帝が刻印したビーズの首飾り)88万1千500ポンド(142万8千30米ドル)で落札され、2011年にも別のムガール帝国スピネルネックレスが約4億3000万円で落札されています(ジュネーブ・クリスティーズ)。
番組に出演している中で人気の高さを実感できるスピネル。GSTVではさまざまなカラー、高価なものからお手に取りやすい価格のものまで、多種多様なスピネルジュエリーを取り扱っていますので是非「あなただけのスピネル」を探してみてください。
古屋 聡(ふるや さとし)
大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。