資産価値としてのジュエリー

「資産価値」としてのジュエリー【第9回】アクアマリン

2023年6月30日

最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2023年7月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

古代から近代まで親しまれるアクアマリン

 ラテン語で「海の水」という言葉から名付けられたアクアマリン。澄み渡る海のように美しいこの石は、ギリシャ神話に登場するほど歴史深く、古来では海神・ポセイドンの怒りを鎮める効果があるとされ、船乗りたちからお守りとして重宝されていたそう。

中世ヨーロッパでは「夜の宝石の女王」と呼ばれ、貴族女性たちがこぞって身につけて夜会へお出かけしていたようで、かのマリー・アントワネットも愛した宝石のひとつとしても有名です。アクアマリンのジュエリーを着用されている方を見ると、清潔感や気品を感じる人が多いと感じます。故に古代から近代まで親しまれ続けている、人類にとって特別な色石のひとつなのだと思います。

アクアマリンの価値

 そんなアクアマリンは伝統的で有名な宝石でありながらも、ルビー、サファイア、エメラルドといった宝石と比べると大粒の原石が採掘されていたので、市場においてサイズ感のある素材が手に入りやすいという強みがありました。しかし、近年は海外での人気が急激に高まり価値が急上昇したため一転、仕入の現場で競り負ける機会が増えた=手に入りづらいアイテムになっています。

アクアマリンの色

 アクアマリンは「緑色を感じる柔らかい水色」から「濃い灰青色」までのカラーバリエーションを持ちます。評価は青色が強くなるほど高まりますが、一概に「色が濃ければ高価値」とは言い難く、高い透明度=内包物の少ない透き通った結晶であることも評価の大きなポイントになっています。やはり華やかなきらめきを持ってこそ評価される石なのです。

アクアマリンの産地と特徴

 産地別にみるとブラジルのミナスジェライス州、サンタ・マリア・デ・イタビラ鉱山で見つかった深い青色の石で「サンタマリア」と呼ばれるものが最高品質です。

ブラジル産アクアマリン

ただしこの地域での産出は遠い昔に枯渇しており、現在では稀に採掘されることが報告されている伝説のようなアクアマリンとなります。通常、ブラジル産アクアマリンは柔らかい色の石が大半ですが、全体に透明度が高く、最もポピュラーな産地であることに揺るぎはありません。

モザンビーク産アクアマリン

次に有名なのがモザンビーク産。1970年代に見つかった新しい産出地で、サンタマリアに近似した美しい石が採掘されるようになりました。これらは前者と区別するために「サンタマリア アフリカーナ」と呼ばれ高価値で取引されています。

世界の多くの国や地域で採れるアクアマリンですが、上記の産出地は覚えてもらえると嬉しいです。

オークションにおけるアクアマリン

 近年でもロイヤルファミリーたちがその見事なジュエリーを身につけては世界中で話題になっているアクアマリン。もちろん、各地のオークションにも登場しています。北ドイツのメクレンブルク=シュべリーン大公国・フランツ4世の妃の結婚祝いとして贈られた、最高品質の大粒アクアマリン9石をあしらったティアラは2019年、クリスティーズのオークションにて103万5,000スイスフラン(約1億5000万円)で落札されました。

希少なアクアマリンとダイヤモンドのティアラ、ファベルジェ
(2019年5月 クリスティーズ)
出典:Christie's | RARE AQUAMARINE AND DIAMOND TIARA, FABERGÉ

ちなみにGSTVでもおなじみ、ベルント・ムンシュタイナー氏の代表作品「ドンペドロ」は世界最大のアクアマリン!
イーダー・オーバーシュタイン作品はじめ、GSTVでは多数のアクアマリンジュエリーを取り扱っています。暑い季節にとても似合う、涼しいお色味と透明感のアクアマリンを是非、夏のお買い物にご検討ください。

ベルント・ムンシュタイナー氏の「ドンペドロ」(10,363ctのアクアマリンのオブジェ)。ワシントンDCスミソニアン自然史博物館収蔵(GSTV FAN 2021年10月号「ストーンカメオ講座」より抜粋)

\もっと見たい方!/

古屋 聡(ふるや さとし)

大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。

> 古屋 聡のプロフィール

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