強い日差しの届かない木陰に腰を下ろすと、カラリと乾いた空気のせいか過ごしやすい。 吹く風に乗って香るにんにくの香ばしい匂いに空腹を訴えたお腹がとうとう鳴った。
「おまちどう様。お客さんも波に乗るの?」
テーブルにガーリックシュリンプとビールを置いた女性店員からの問いかけに首を横に振る。
——此処、ノースショアが波乗りの街だということは到着してから知ったのだ
「波乗りでもないのに2月のノースショアになんの用?」
「せっかくのハワイだから綺麗な海が見たくて」
「ならばラニカイビーチのほうがよかったな。ノースショアは波乗りの海。眺めるだけなら他のビーチの方が静かで美しいよ」
派手なキッチンワゴンから降りてきた店主が隣のテーブルへ腰掛けた店員へランチボックスを差し出す。昼を大幅に過ぎた時間だから、二人も遅めのランチにするそうだ。
「午後も接客があるから」
とアヒポキを頬張る二人の首に揃いのネックレスがキラリと光っていた。
「お二人のネックレスにはどんな意味が?」
「私は幸せな未来を意味するハイビスカス、彼は波に乗るから守り神のホヌ。二人揃いで絆を表すマイレを彫ったのよ」
「仕事柄、指輪は贈れないからね、これに永遠を誓ったんだ」
顔を見合わせて笑った二人に木々の隙間から柔らかな光が降り注いでいた。