(番組ガイド誌「GSTV FAN」2022年10月号の掲載記事をWEB用に再編集しております)
2022年5月よりGSTV本社にて、“宝石学の父”と呼ばれる近山晶氏が世界中から収集した約3万点の内の稀少価値の高い原石・宝石を展示した「近山晶コレクション」がGSTVファンに向けて初公開されました。「宝石は美であり科学である」という信念を持ち、宝石に関わる人々のため生涯をかけ調査・研究を重ね宝石学の普及に努めた近山晶氏。本連載ではそんな「近山晶コレクション」に関わる知見をご紹介いたします。
日本の宝石学の研究をあなたに託したい
宝石学の研究交流を目的にした国際宝石学会。1952年よりドイツで開催され、2年に一度開かれる本会議に1966年から参加し始めた近山晶先生は、そこから日本における宝石学教育の基礎を立ち上げたのでした。それまでは山梨大学の工学部で講師として務め、県立研磨工業指導所で硬脆材の加工を指導されていました。
私と近山先生は2004年に中国の武漢で開かれた国際学会で初めて出会いました。その時に「今後、日本の宝石学の研究をあなたに託したい」と言われたことを、いまだ鮮明に覚えています。3年後に先生が亡くなられていたことは後から知りました。2016年に初めて近山晶宝石研究所を訪ねる機会があり、先生の部屋に数えきれないほどの岩石、鉱物、宝石結晶の標本が並べられたことに大変感激し、さすが日本の「宝石学の父」と呼ばれるに相応しい方だと思いました。
1960年代から、近山先生は世界中の宝石鉱山へ足を運び、現地の宝石鉱床を把握しながら原石を採集し、毎年、国際宝飾展やミネラルショーなどを訪ね、日本国内の宝石教育及び研究に最も良い標本・新しい情報を集めてきました。40年余りの年月をかけて集めた標本は3万点以上にのぼり、「世界の宝石学の父」と称呼したスイスの著名な宝石研究者Dr. Edward Gübelin氏が集められた宝石研究資料に匹敵するほどです。筆者が知っている限り、国内の宝石鑑別士や愛好家の中で、個人としてこれほど集めた方はいません。また、このような標本をこれから探すこと、買うことはなかなか非現実的です。これらの標本の魅力と稀少価値を色々な方に知ってもらうために、陳列室または博物館を立ち上げるのが私の夢でした。
6年を経て、ようやく”Dreams Come True”、夢が実現しました。GSTVは今年3月に天王洲アイルへ本社移転し、今橋社長と大久保洋子さんの積極的なご支持により、社内の一角に立派な博物館を作り上げることができました。
これから本誌を通じて、博物館がどのように立ち上げられたのか、近山晶宝石コレクションはどのように整理・分類されたのかについて少しずつ紹介していきたいと思います。
新設立したGSTVジェムミュージアムは単なる標本の展示ではありません。近山先生が我々に残した貴重な資料と標本を再度収集、整理、保存し、実物を通じて標本の豊富さ、稀少さ、面白さを皆様に伝え、知識を与える重要な役割を果たせるものにしていきたいと思っています。
阿依 アヒマディ(あい あひまでぃ)
Tokyo Gem Science社の代表兼GSTV宝石学研究所の所長。
理学博士・FGA。国際鉱物学会(IMA)宝石素材委員会日本代表。国際宝石学会理事。京都大学理学博士号取得後、全国宝石学協会 研究主幹を務め、2012年にGIA Tokyoラボを立ち上げる。現在はTokyo Gem Science社の代表およびGSTV宝石学研究所の所長として、宝石における研究、教育セミナー、宝石鑑別などの技術サポートを行っている。宝石の研究、鑑別に関して日本を代表する宝石学者。
GSTVジェムミュージアム
完成した「GSTVジェムミュージアム」。日本における宝石研究の大家、近山晶先生が収集した貴重な試料を展示し、日本の宝石の歴史を後世に伝えていきます。
「GSTVジェムミュージアム」はアヒマディ博士とそのスタッフの協力により貴重な標本が整理され、展示されてます。
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