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イスラーム美術様式 その2「楽園の庭アラベスクの誕生」

2020年6月1日

「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」がジュエリーの様式とその歴史を解説。今回は、イスラーム美術様式「楽園の庭アラベスクの誕生」をご紹介します。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2020年6月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

楽園の庭アラベスクの誕生

 イスラーム文様は無限にありますが、ジュエリーデザインにも取り入れられるアラベスク(=アラブ風)模様にフォーカスしてみたいと思います。

イスラームモスク内の壁の装飾をご覧になったことはございますか?イスラーム教では偶像崇拝は禁じられているため、広い平らな空間があるだけですが(メッカの方向を示すミフラーブと呼ぶ壁の一部に凹みがある場合もある)、壁には伸びやかなパターン化された植物連続模様、幾何学的な模様、純粋な宗教美術カリグラフィーが描かれ、カーペットに至るまで美しく、神聖な空気を肌で感じると共に、美術展示のような文様は、見る者の視覚を刺激してくれます。

イスラーム美術の文様を理解するのには、「遊牧文化の精神がベース」ということを念頭に置き、日本的な定着文化の思想はここでは封印する方が分りやすいと思います。なぜなら、その影響範囲が、太平洋に面する東アジアから大西洋に面する西アフリカに至る広大な地域にまたがっており、異民族の交流で完成するからです。地域の多様性を内包しつつも、統一要素があり、イスラーム文明は非定住=遊牧=永続性に重きを置いています。

この“統一要素”と“永続性”がアラベスク文様の根幹をなすと言っても過言ではありません。アラベスク模様は、植物柄が連続しているのをよく見ますが、明確な目的があるそうで、植物をあるがままに描写することではなく、植物のリズムや生長のエッセンスを視覚的にデザインすること、天地創造の膨張と収縮の繰り返し、生命の始まりと終わりのサイクルを表す事が重要ということです。

例えば、花独特の形状を取り出す繰り返し模様と唐草でイメージする渦巻きは、典型的なアラベスク模様です。特に渦巻きは、どの地域でも太陽と関連させて表現されているので、くるんとした丸さも特徴です。


余談ですが、バレエで“アラベスク”と呼ばれる一本足で立つポーズがありますが(フィギュアスケートでも見るポーズ)、全身の筋肉を総動員させ、バランスを取り、その形を維持、各部位の向きの正確さの追求があってはじめてこのポーズが完成します。伸びやかなシルエット、均整のとれた美しさが図案と重なるから名付けられたのかと想像しました。次回は幾何学模様を見てみましょう。

目黒 佐枝(めぐろ さえ)

GIAサンタモニカ校にて、GGを取得。その後、高級ジュエラーで10年に亘り、ジュエリー選びのアドバイスと販売に携わる。

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