資産価値としてのジュエリー

「資産価値」としてのジュエリー【第10回】アレキサンドライト

2023年8月31日

最近、身につけるだけでなく「資産価値」としてジュエリーが注目されています。理由はさまざまありますが、鉱山からの産出が減ってきていること、そして新興国の富裕層が素晴らしいジュエリーをコレクションする機会が増えていることが主な要因です。
そこで世情にそって本連載では「資産価値」の観点からジュエリーを見ていきたいと思います。

(番組ガイド誌「GSTV FAN」2023年9月号掲載記事をWEB用に再編集しております)

アレキサンドライトの発見

 世界中の宝石愛好家たちから「皇帝の宝石」とも呼ばれ、豊かなカラーチェンジが魅力的なアレキサンドライト。アレキサンドライトの発見については諸説あり、一般的には1830年にロシアのウラル山脈にて発見されたといわれています。

昼の太陽光下では青緑の色であったためエメラルドだと思われていたところ、傍でろうそくを灯したら赤く変色したため、別の宝石と判明しました。この宝石はロシア皇帝ニコライ1世に献上され、皇太子アレクサンドル2世の名にちなみアレキサンドライトと名付けられたそうです。諸説あれど“皇帝”の名前を付けられたアレキサンドライトは、カラーチェンジの面白さと稀少性から人気になり、高級宝石としての地位を確立してきました。

アレキサンドライトの特徴

 アレキサンドライトはキャッツアイで有名なクリソベリルの変種で、その特徴は何といってもカラーチェンジという光彩効果。「昼のエメラルド」「夜のルビー」と言われるように、日光の下では青緑色に、ろうそくの光や白熱灯に照らされると赤から紫がかったワイン色へと光源の変化で色が変わります。アレキサンドライトには微量の鉄、クロムなどの不純物が含まれ、カラーチェンジはこのクロムを含有することで起こります。またモース硬度は8.5と丈夫で優れた靭性を持ち、衝撃によって割れる性質のへき開がないことも、宝石としての価値の高さを示すものといえるでしょう。

アレキサンドライトの産地

 主な産出国については、前述のウラル鉱山では大半が掘りつくされてしまいました。現在の主な産地はブラジル、スリランカ、インドなどです。特にブラジル/ヘマチタ鉱山からは、深い青緑色から鮮やかなワインレッド色へ美しいカラーチェンジを示し、最も高い評価にて取引されるアレキサンドライトが産出します。

ただし現状は全ての鉱山で産出量が減少しているため、市場への供給量も大きく減少、そして透明度の低い濁った石が多いという状態になっています。そのため大粒かつ高品質なアレキサンドライトは特に高価値で取引されていて、今後ますます価格が上昇すると予想されています。

オークションにおけるアレキサンドライト

 オークションにももちろん登場しています。2011年4月のサザビーズ香港でのオークションでは、カボションカットのブラジル産アレキサンドライトキャッツアイ(23.19ct)が出品されました。こちらはクリソベリルに猫目のようなシャトヤンシー効果が見られ、なおかつカラーチェンジ効果が見られる大変希少な宝石で、1,1860,000HKドル(2億160万円)で落札されました。

非常に希少なブラジル産アレキサンドライトキャッツアイ(2011年4月 サザビーズ)
出典:Sotheby's | VERY RARE AND IMPORTANT CAT'S-EYE ALEXANDRITE, ALEXANDRITE AND DIAMOND RING

その後も2012年3月、香港クリスティーズで開催されたオークションに出品されたブラジル産アレキサンドライト(約15.58ct)のリングは7,220,000香港ドル(約1億1840万円)、2014年5月、スイスで開催されたクリスティーズのオークションでは21.41ctのロシア産アレキサンドライトが1,325,000スイスフラン(約1億8680万円)で落札されています。

アレキサンドライトとダイヤモンドのリング
(2012年3月 クリスティーズ)
出典:Christie's | AN ALEXANDRITE AND DIAMOND RING

 美しさや華やかさとは異なる「カッコよさ」や「面白さ」を実感できる色石愛好家に大人気のアレキサンドライトのジュエリー。GSTVではカジュアルなものから高価なものまで幅広くご用意していますので、「あなただけのカラーチェンジ」を是非探してみてください。

\もっと見たい方!/

古屋 聡(ふるや さとし)

大手鑑別機関や海外オークション会社に勤務した経験を活かし、様々な角度からジュエリーを解説するカラーストーンプロフェッショナル。FGA(英国宝石学協会)資格取得。

> 古屋 聡のプロフィール

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