東洋では「太陽の宝石」、古代インド人は「宝石の王」と様々な呼び名を持つルビー。多くの伝承・逸話が残っております。
そこでルビーにまつわる神話や逸話をほんの一部をご紹介します。
古代文明とルビー
ルビーは古くから好まれ、多くの人々がこの深い赤色をした宝石に隠れたパワーが秘められていると信じていました。燃えるような深紅の色で、多くの文化圏で情熱、愛、ロマンスを連想させました。また知識、健康を与え、賭け事の運を良くするとも考えられていたそうです。
ルビーの神秘の歴史とその美しさは、きわめて貴重なこの宝石にまつわる伝説や伝承と同様に華やかです。
ルビー採鉱の最も古い記録は2500年以上前
ルビーの採鉱に関する最も古い記録は2500年以上前までさかのぼり、「インド洋の宝石箱」スリランカで「rathu kata(ラトゥ・カタ)」と呼ばれています。
スリランカ産のルビーが西洋のジュエリーに登場したのは、エトルリア※が最初で、さらに紀元前480年頃からはギリシャ人とローマ人が使っていました。この千年間は、最も評価の高いルビーはミャンマー(旧ビルマ)産のものです。
エトルリアとは
エトルリアは、紀元前8世紀から紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群。
古代インドでは
ルビーは「太陽の宝石」だと信じられていました。 サンスクリットの文書によると、古代インド人はルビーの色に魅せられて、「宝石の王」という意味の「Ratnaraj(ラトナラジュ)」と呼んでいました。
古代インド人は、ルビーの色はその石の中にある消えない火によるものであり、これによって身につけた人は長生きができ、水を沸かすことさえできると考えられていました。
古代セイロン(現スリランカ)では
古代セイロン(現スリランカ)の伝説では、羅刹王ラーヴァナ※の破滅と関係があるとされています。彼の死後、その血がルビーに流れ、深い赤色になったとされています。
ラーヴァナとは
叙事詩「ラーマーヤナ」に登場するインド神話における羅刹の王。
2000年以上にもわたって、スリランカは世界中に上質なスタールビーを供給してきました。実は、スリランカはこの宝石の原産地と言えるでしょう。
古代のシンハラ族は、スタールビーが身に着けた人を魔法から守ってくれると信じていました。護符として強力なので、もともとの持ち主が宝石を他の誰かに譲っても、守護の力を受けつづけると考えられていました。
スタールビーは、ヨーロッパでは「3つの剣」と呼ばれることがあり、邪悪を追い払い、幸運を運び、良き伴侶を見つけることができると言われていました。
聖書・伝説に登場するルビー
聖書に登場するルビー
聖書でもルビー※は、最も貴重な宝石とされていました。欽定訳聖書には、ルビーが何度も登場しています。
聖書では、多くの宝石は特定の鉱物名ではなく特定の色の石を指すために使用されていたため、「ルビー」ではなく、赤い宝石は全てまとめ「カーバンクル」いう名で登場しています。
ルビーと思われていた石はスピネルやガーネットだった
興味深いことに、旧約聖書に出てくる「ルビー」 は、実際にはスピネルやガーネットでした。
化学的検査のレベルが高くなった18世紀までは、赤い宝石のほとんどがルビーと呼ばれていました。ヨーロッパ諸国の戴冠用宝玉に使われている有名なルビーの多くが、実はスピネルやガーネットであったことが分かっています。
例えば、大英帝国王冠の中央に堂々と鎮座する「黒太子のルビー」は、実は赤いスピネルだったのです。
様々な地域のルビーにまつわる言い伝え
ネイティブ・アメリカンは、美しいルビーを奉納すると、すばらしい首長に恵まれると信じていました。 ルビーの血のような色が、身につけている人を怪我から守ると信じている文化もありました。
例えば、古代ビルマの戦士たちは、ルビーを皮膚の下に入れておくと不思議な力が生まれ、戦いで敗れることがないと信じていました。ルビーはかつてビルマ(現ミャンマー)では「母なる大地の心臓から落ちた血のしずく」として知られ、病気や不幸から守ってくれる護符として身につけられていたそうです。
中世では、ルビーには予言する力があると考えられていました。色が深くなると、身につけている人に災いが起こるとされていました。
ビルマの有名なルビーの伝説
エドワード・ギュベリン博士は著書『ビルマ、仏塔の地』でビルマ(現ミャンマー)の有名なルビーの伝説を採録しています。
ある日、谷の王の大きい年老いたワシが、自分の王国の上を旋回しながら獲物を探していました。青く輝く天空を円を広げるように飛び回っていると、谷底に鮮血の色をした新鮮な肉を一切れ見つけました。肉は世界中を飛び回ってきた老ワシが見たこともないほど、魅力的に見えたのでした。これこそは自分の求めていた尊い食べ物だとワシは言い、狙った獲物目掛けて急降下していきました。
ところがそれまでどんな厚い獣の皮も突き刺してきた鋭く力強い鉤爪が、生きた心臓の色をした、餌になるはずだったこれにはなす術もなかったのです。
ワシは攻撃を続けました――谷の王であるワシは、勝つことが当たり前になっていたからです。けれども無駄でした。ワシは寄る年波に力が衰えたのかと思いはじめ、もう一度考えようと空へ飛び上がりました。
また、力を試そうと他の獲物を探しましたが、力が衰えていないのを確かめるとその獲物はぞんざいに放っておき、求める標的への攻撃を再開しました。
そしてやっと、ワシにもわかりました。これは肉などではなく、炎と母なる大地の血から生み出された、聖なる石だったのです。
老いた賢い鳥たちの王は、石をうやうやしく掴むと、一番高い山の頂上へと運んでいきました――地上のあらゆる生き物の手の届かないところへ。
ワシが貴石を見つけた谷の名をモゴックといい、この石は世界で最初のルビーでした。
探検家マルコ・ポーロが語るフビライ・ハーンとルビー
有名な探検家マルコ・ポーロ※によると、中国元朝の始祖であるフビライ・ハーン※は、13世紀に街と交換に人の指の大きさがあるルビーを手に入れたそうです。また、伝説によると巨大なルビーが中国皇帝の宮殿の一室をすっかり照らしていたことがあったといいます。
マルコ・ポーロとは
ヴェネツィアの商人で、ヨーロッパや中央アジアを紹介した「東方見聞録(世界の記述)」の著者。
フビライ・ハーンとは
モンゴル帝国第5代皇帝であり、元朝の初代皇帝。
19世紀アメリカのエッセイに登場するルビー
19世紀初頭のアメリカのエッセイスト、詩人で超絶主義の主導者でもあるラルフ・ワルド・エマーソンは、ルビーについて次のような詩を書いています。
彼らは鉱山からわたしのところへルビーを持ってきて、太陽へとかざした。
わたしは言った。
『これはエデンの酒樽のワインが凍った粒だ』
わたしはもう一度眺めた――友の心臓だ、未知の友の心臓だと思った。
近しい命を暖めるべき血潮が、輝く石の中に閉じ込められている。しかし赤い雪を溶かす、魔法をかけられた氷を割る、愛の緋色の潮を流れさせる炎、そんな太陽はいつになったら昇るのだろうか?
まとめ
ルビーにまつわる伝承をご紹介いたしました。
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