「麗しの宝石ショッピング」「ジュエリーライフ11」でお馴染みの人気コメンテーター「目黒佐枝」がジュエリーの様式とその歴史を解説。今回は、ポルトガルの大航海時代の功績「金線細工」について、特徴などをご紹介します。
(番組ガイド誌「GSTV FAN」2020年8月号掲載記事をWEB用に再編集しております)
栄光のポルトガル
ポルトガルというと、何を思い浮かべますか?
私は、パオ・デ・ロー(カステラの原型)ですね(笑)。
お菓子はさておき、通常は、布教活動で来た宣教師をイメージする方が多いかもしれません。
ご存じのように、15~16世紀のポルトガルは、植民地開拓と東西貿易で巨万の富を得ました。
狩野派の南蛮屏風に、召使いに傘を捧げられている2人の男性が太い金の鎖を装っている姿が描かれています。
ポルトガルでは、このような金のチェーンはもちろんのこと、現在でも伝統工芸品として残っていますので、その装飾品の一部を紐解いてみましょう。
ポルトガルの装飾品の特徴とは
ポルトガル・スペインの位置するイベリア半島は、両国ともローマ帝国の時代、イスラム支配下の時代を経ています。
そのため、装飾美術ではイスラムの“連続性”“具象的表現”が好んで取り入れられていましたし、キリスト祭壇装飾では、ポルトガル王室付きのフランドル出身の有名細工師達が、線状細工のように多くの透かし彫りを用いていました。
ポルトガルの装飾は、植物や海洋の世界から得たモチーフ、珊瑚・網・海藻・太い綱・綱の結び目や国王の紋章・天球儀・キリスト騎士十字など、バロックからマニエリスム装飾まで、さまざま傾向が混ざりあっているのが特徴です。
ポルトガルの金線細工
ポルトガル宮廷は、ローマ教皇を兼ねていたことにより国際的事業を行う権利があり、ブラジル、東アフリカ、西アフリカの一部を植民地として獲得していくことは正当化されていましたから、17世紀末、ポルトガルの植民地ブラジルで金やダイヤモンドが発見されると、莫大な資金を手に、宮廷に庇護された金細工師達が高度な技巧を発揮出来ました。
金線細工以外では、ブラジルやアフリカで宝石が採られたことから、ポルトガル宝物の中に、ダイヤモンドのブローチ・イヤリングやクリソベリルとルビーを使用した重要な記章があります。
よく見ると、どう留めているのか分からないぐらい石留めが洗練されていて、1700年代のものとは驚きです。細工の技術が高かったのですね。