旅先ジェリー

旅先ジュエリー ~トルコ編~

2020年7月1日

「テシェキュル エデリム」
 この国の言葉でお礼を言うと、案内してくれた青年は嬉しそうに笑ってくれた。

 青年の助けを借りてようやく辿り着いた宮殿は王様の居城にふさわしく立派な門がまえをしていた。地図に目を通すと中庭だけで4つもあり、建物すべてに歴史的価値があるためゆっくり見て回ろうとすると1日あっても到底足りないように思えた。
 荘厳な門を潜り、人の少ないうちにと目当ての場所へ足早に中庭を抜ける。目当ての場所にはすでに沢山の人が列をなしていた。大人しく最後尾に並び、昨晩ホテルで調べたことを思い出す。オスマントルコの栄華の象徴ともされるこの宮殿の宝物庫は現在工事のために閉鎖されているが、目当てだった短剣とダイヤモンドは見ることは可能らしい。
 ゆっくりと進む列の中で画像で見た短剣を思い出す。巨大なエメラルドが3個、短剣の柄に飾られ鞘にも大小のダイヤモンドが散りばめられた短剣は贈呈用に作られたそうだ。

 列の先にショーケースが確認できた。先ほどまで気にならなかった緩やかな行進が途端にもどかしく思える。前の人が端に避けたので一歩踏み出してショーケースを覗き込んだ。

「……っ」

本当に素敵なものを見た時、人は息をすることを忘れるらしい。

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