酩酊を防ぐお守りとしても知られている「アメシスト」の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説についてご紹介します。
アメシストとは
アメシストは2月の誕生石です。クオーツの仲間で、透明なパステル調のローズ色から深い紫色、菫色まであります。かって酩酊を防ぐお守りと考えられていました。
アメシストの特徴 | |
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原産地 | ブラジル、ケニヤ、マダガスカル、ウルグアイ、ザンビア |
色 | ピンクがかった紫色から紫まで |
属性 | クオーツ |
硬度 | 7 |
屈折率 | 1.544〜1.553 |
比重 | 2.66 |
そのほか | 2月の誕生石 |
アメシスト の伝説・歴史とは
神話に登場するアメシスト
グレープジュースが好きだったことで知られるディオニュソスは、ギリシャ神話に登場するワインの神です。しかしゴブレットで何杯か飲んだだけで、少々喧嘩早くなってしまったそうです。
ある日、ゴブレットを片手にほろ酔い機嫌で森を歩いていたディオニュソスは、通りがかった人間が自分に敬意を示さなかったので侮辱されたと思いました。ディオニュソスは憤り、次に出会う人間に復讐することを誓ったのです…。
そこへやってきたのが美しい娘アメシスト。女神ダイアナに捧げ物をしに行くところでした。ディオニュソスはアメシストを復讐の相手と決め、指を鳴らして2頭の獰猛な虎を呼び、アメシストを食べさせようとしました。ディオニュソスが見物を決めこんで座ると、アメシストは女神ダイアナに助けを求めました。その様子を見たダイアナは、アメシストを真っ白にきらめくクォーツの像に変えて、獰猛な虎から守りました。
ディオニュソスは罪悪感に襲われ、自分の冷酷な行いを悔い、悲しくなって涙を流しました。涙がゴブレットに落ちるとディオニュソスは崩れ落ち、涙混じりのワインがアメシストの像にかかりました。白いクォーツはワインの色を吸って、今日私たちがアメシストと呼ぶカラーストーン、神の宝石となったのです。
酩酊を防ぐお守り
アメシストの起源にまつわる神話からしても、この宝石がかつて酩酊を防ぐお守りと考えられたことや、ワインのゴブレットがアメシストで作られたということも、もっともなのではないでしょうか。
古代ギリシャ人はしばしば他の言語の単語からおもしろがって言葉を作り出したようですが、もしかしたらヘブライ語で紫色の宝石を意味する「アクラマス」を変換させて、「酒に酔っていない」という意味のギリシャ語「アメテュストス」という言葉を作り、それが現在使われているアメシストという言葉になったのかも知れません。
伝説では、この言葉は文字通りに受け取られ、まるでギリシャ人は本当にアメシストが酩酊を防ぐと考えていたかのようです。
アメシストの紫色は高貴なもののシンボル
アメシストの紫色は、昔から高貴なもののシンボルと考えられてきました。ファラオも王も女王も、宗教の宗派の指導者たちも、古くからアメシストの豊かで高貴な色を尊んできました。
興味深いことに、この紫色への敬意はローマ時代にまでさかのぼります。勝利を祝う将軍たちは、後には戦いに加わらなかった皇帝たちも、「トーガ・ピクタ」という金色の刺繍を施した明るい紫色のトーガを着たということです。
中世カトリック教会の装飾で重要な役割を果たす
酔いからさます効果だけでなく欲望による興奮からもさますとのことで、アメシストは禁欲を支えると考えられていました。そのため中世のカトリック教会の装飾において重要な役割を果たしました。
「ローマ教会の石」とみなされてきたため、今日でも司教はアメシストの指輪を身につけています。
そのほかアメシストにまつわる言い伝え
そのほかにも、15世紀にはアメシストは様々な性質があるとされました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ は、アメシストは邪悪な考えを追い払い思考力を高めると書いています。また、商人には商売の才覚を与え、兵士は怪我から守り、狩人が野生動物を捕らえる手助けをしてくれると信じられていました。
装飾品としての歴史
装飾品としての歴史は、ギリシャ時代(紀元前およそ2500年)のミノア文化にまでさかのぼります。カボションカットのアメシストを嵌め込んだ金の指輪が発掘されています。
19世紀には、アールヌーボーのジュエリーに使われ、人気を呼びました。
アメシスト の特徴・特性とは
アメシストは顕晶質(結晶の大きい)のクォーツ で、鉄分とアルミニウムから生まれるその色は透明なパステル調のローズ色から深い紫色、菫色まであります。
ほかの多くの宝石同様、アメシストの品質はその産地によって様々に異なります。
アメリカ大陸産のアメシストには大きな物が多いのに対して、アフリカ産アメシスト(特にマダガスカルやザンビア産のもの)は比較的小さいものの、彩度が高いのが特徴です。色が濃く、彩度が高いアメシストはオーストラリアとスリランカでも採掘されています。歴史的に有名なシベリア産の物は深い紫色で、時おり赤や青の光を放ち、非常に価値があります。
しかし、最も生産量が多いのはブラジルです。ディオニュソスのワインが本当にアメシストの色のもとだとしたら、ブラジル産アメシストはヴィンテージワインで出来ていると言えるでしょう。
ブラジル産アメシスト
ブラジル産アメシストが最初にヨーロッパにもたらされたのは1727年。瞬く間に流行し、高価なものになりました。
18世紀のフランスとイギリスで特に人気が高く、裕福な一族の多くがアメシストに大金を投資しました。たとえば、イングランドのジョージ三世の妻であったシャーロット王妃は、アメシストのネックレスを大変高い値段で買ったそうです。
ブラジル産アメシストの主な産地はミナスジェライス、バイーア、そしてマラバーです。隣国のウルグアイでも、目を見張るばかりに美しいアメシストが見つかっています。
ラベンダーアメシストとも呼ばれる「ローズ・ド・フランス・アメシスト」は、パステル調のライラックのような色彩をしたブラジル産アメシストです。
ヴィクトリア時代には大変人気のあった宝石で、アンティーク・ジュエリーでよく見かけます。最近もパステル調カラーストーンの人気が高まり、また注目を浴びています。
コントラストが美しいバイカラーアメシスト
バイカラーアメシストは、アメシストの気高いラベンダー色と、白色水晶の氷のような白が、美しく融合した宝石です。
バイカラーアメシストは、形成の途中で環境の変化が起きたためにできたものです。色の元となる物質(鉄分)は、結晶の中に入る時期によって異なる色の層を作り出します。この性質を意図的に利用してカットされるのがバイカラーアメシストで、異なる色のコントラストの良し悪しによって価値が決まってきます。
ふたつの色になるように宝石をカットするのは職人にとって難しく、きれいにカットするのが非常に困難であると言われるだけに、出来栄えの良いバイカラーの宝石は実に美しいものです。
まとめ
「アメシスト」の特性、特徴、希少性、石にまつわる伝説・歴史についてご紹介いたしました。
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